GO GREEN KOBE 環境にやさしい神戸をつくる。

Articles

循環型社会

最終更新日:2022年6月28日

インタビュー・文 /北村胡桃 写真/江副真文・住みびらきのお家ケレケレ提供

子育ても食事もみんなでシェアする「住みびらき」。
環境にやさしい暮らしを実践しています。

住みびらきのお家 ケレケレ

城戸 和美 さん 林 一平 さん

神戸市北区にある古民家を改装し、地域に開放する「住みびらき」。シェアハウスや農園、量り売りなどの多様な事業を展開。農業、食、教育、環境をテーマに、人と人がつながる場を作っています。

web site

https://sites.google.com/view/kerekere/home?authuser=0

Instagram
https://www.instagram.com/happiestcouple2020/

Facebook

https://www.facebook.com/kerekere2020/

-ケレケレの事業を教えてください。

和美さん
古民家を改装し、住まいの一部を地域に開放する「住みびらき」をしています。シェアハウス、コワーキングスペース、貸しスペース、農園、アートスクール、量り売りなど、さまざまな事業に取り組んでいます。私たち夫婦は、青年海外協力隊として滞在していたフィジーで出会いました。フィジーの言葉である「ケレケレ」は「シェア(分かち合い)」という意味。フィジーには何でもシェアする文化があります。夫が神戸市出身なので、子供が生まれて神戸で育児をし始めた時、ご近所付き合いはあいさつする程度。夫婦二人だけの子育てはとても大変だと感じました。フィジーのように子育てやいろんなことをみんなでシェアできたら、負担が減って気持ちも楽になると考え、住みびらきすることを思い立ちました。

-シェアハウスでは、どんな人がどんな暮らしをしているのですか。

和美さん
シェアハウスに来ている目的はさまざま。住みびらきや地域、コミュニティに興味がある人、都会から来た人は「田舎体験がしたいけれど、都会にも出やすい場所」としてケレケレを選んでくれます。1週間や2~3カ月と短い期間で滞在する方が多く、どんどん住人が変わるのもケレケレの特徴です。住人それぞれがお友達を連れて来てくれて、日々いろんな方が出入りする、住みびらきらしい空間ができていますね。ケレケレは基本、みんなで夕食を食べます。誰かが量を多めに作って一緒に食卓を囲みます。これはシェアハウスでは珍しいらしく、ケレケレに滞在した人から「家族のような感じがよかった」と言われたことがあります。

一平さん
買い物も一緒にするので、無駄なく買えて個包装が減り、ごみが減る。みんなで一緒に食事するのは「究極のエコ」じゃないかと思います。

-環境にやさしい暮らしを実践するためにシェアハウスで取り入れていることはありますか。

和美さん
キッチンなどの共同スペースで環境にやさしい商品を使ったり、できるだけごみを出さないよう意識しています。例えば庭にあるコンポスト。生ごみは燃やすにもエネルギーがかかりますが、コンポストに入れて置いておけば堆肥になり、農園で有効活用できます。シェアハウスに入居した人には、こうした取り組みをきちんと説明するようにしています。ケレケレで環境にやさしい暮らしを体験し、ケレケレを離れた後も、少しでも暮らしに取り入れてくれたらいいなと思っています。

-ケレケレの目の前には農園が広がっています。

和美さん
畑を区画に分けて、有機栽培の貸農園をしています。もともと夫が有機農業に興味があり、以前仕事で携わっていたこともあって、ケレケレでも有機農業をしようと考えました。利用者は、北区の方が多いのですが、畑をやりたいけれど場所がない地域の方や、有機野菜に興味がある団体さんも借りられています。私たちが栽培方法を教えるというよりは、みんなで「一緒にやってみましょう」というスタンスで取り組んでいます。

-アートスクールはどんな取り組みですか。

和美さん
ケレケレの一角をアトリエにしているアーティストさんが、子ども向けのアートスクールを始めました。決まった描き方を教えるのではなく、「何を描いても正解」と、子どもの自尊心、自己肯定感を上げる教え方をしてくれています。彼が教えると、子どもたちがどんどん輝く感じがしますね。学校に馴染めなくて、絵が好きなお子さんが「アートスクールに通って変わった」と、リピーターで来てくださる方もいます。

-「量り売り」について教えてください。

和美さん
量り売りで取り扱っているのは、油や酒粕、有機のお米、スパイスなど。岡山の西粟倉村で勤めていたときに知り合った起業家さんなどから仕入れています。同じ食材でも、環境に負荷がかかる作り方と負荷がかからない作り方があるのですが、環境負荷がかからない作り方だと大量に生産できず、スーパーに置いてもらえないという実情があります。それなら、スーパーで買えないものをケレケレで買えるようにしたいなと考えて、生産過程の環境負荷が小さく、大量生産できないこだわりの食品を置くようにしました。量り売りを利用する方は、環境に関心があるというより、安心・安全な食に関心がある方が多い印象を受けます。子どもに食べさせたいのかもしれません。容器を捨てない限り、ごみはほとんど出ないですよ。

-家の中にも工夫がたくさんありそうですね。

和美さん
DIYを取り入れて、地域のみなさんと一緒に改装しました。例えば、ビーズが散りばめられた壁。知り合いから「幼少期に使っていたビーズで、思い出があって捨てられないから使って欲しい」と提供してもらいました。建築家さんに相談し、漆喰に混ぜて活用してみました。その他、ケレケレにある家具や雑貨は、いただき物が多いです。テーブル、ピアノ、ギターも。捨てるつもりだったけど、まだ立派でもったいないし、子どもが遊びに来る場所だから使ってもらえるんじゃないか、と持って来てくださいます。

-ケレケレでは、どんなイベントがありますか。

和美さん
2ヶ月に一度のマルシェに、地域のみなさんに出店してもらっています。さらに地域の方々が集まって、とても賑やかになります。売るだけではなく、ワークショップ形式のイベントが多いですね。例えば、糸掛け曼荼羅や草木染め、バルーンアートのワークショップ。シェアハウスの住民企画もあります。量り売りで取り扱っている商品の生産者さんを招いたワークショップも定期的に開催しています。最近では、キムチ作りを通して発酵の面白さを伝えてもらいました。ワークショップ形式の方が、コミュニケーションができて楽しくて。ケレケレでは交流を大切にしていきたいという想いがあります。

-いろいろな人が集まってとても楽しそうです。ケレケレを運営する中で、心がけていることはありますか。

一平さん
新しいお店に入る時って、緊張しますよね。だから、初めてケレケレに来た人には話しかけたり、食べ物を出したり、知り合いを呼んだりと、緊張を和らげるようにしています。いろんな人に興味を持って欲しいので、できるだけ多様なイベントを開くようにしています。

-なぜ「環境」がひとつのキーワードになっているのでしょうか。

和美さん
私は以前、産業廃棄物の中間処理会社に勤め、リサイクルの仕事をしていました。仕事をする中で感じたのが、「リサイクルの限界」です。プラスチックなどを固形燃料にリサイクルしていたのですが、固形燃料にするためには軽油をたくさん使わなくてはいけません。確かにごみは減るけど、これは地球にとっていいことなのだろうか、と感じていました。分別してもリサイクルできず、埋め立てられてしまうごみもあります。どれだけリサイクルをしても、ごみはなくならず、環境負荷を与えてしまう事実を目の当たりにしました。リサイクルに限界があるなら、そもそもごみが出ないように暮らしに落とし込んで考えなければいけないと思いました。暮らしの中でごみを出さない方法を考えるようになれば、社会全体としてごみが減るのではないかと。ケレケレを通して、ごみの出ない、環境にやさしい暮らしを伝えていきたいです。

-環境にやさしい暮らしを伝える時、工夫していることはありますか。

和美さん
人それぞれ、響くポイントが違うなと感じています。ケレケレに来る人は丁寧な暮らしが好きな人が多くて。例えばドクダミの葉っぱを麻ひもでくくって吊るし、乾燥させるとお茶ができます。お茶を入れた後は麻ひもごとコンポストに入れ、土に還します。丁寧な暮らしが好きな人は、こうした一連の作業に興味があり、作業する時間を楽しんでいます。おしゃれという言葉が響く人もいます。安っぽく見えてしまうプラスチック製品を木製のものに変えると、少し値段は高いけれどおしゃれ。おしゃれだから取り入れてみたい、長く使いたい、という気持ちになってくれます。ストーリーに響く人もいます。ひとつひとつ手縫いで作っているコースターなど、生産者さんの想いや商品ができた背景を聞くと、大切にしたくなるようです。このように、環境に興味を持っていなくても、伝え方次第で関心を持ってくれますね。

-これから挑戦してみたいことはありますか。

和美さん
ケレケレでは、カフェとアトリエですね。特にアトリエは、古民家の一部を改装して、子どもが自由にアートを楽しめる場所を作ろうと考えています。一方で、神戸市内にこだわらず、ケレケレとはまた違う方法で、環境のことをもっと伝えることができないかも考え中です。

-おすすめのエコアクションはありますか。

和美さん
「買い物をちょっと考える」のはどうでしょうか。私は今まで100円ショップなどで安いものをたくさん買っていたのですが、高くても良いものを買おうという志向に変えてみました。安いものはすぐ捨ててもいい感覚になってしまうけれど、志向を変えて買い物をすると、長く大切に使うようになりました。買い物を「安いから買う」のではなくて、少し違う目線で買ってみると、ものの使い方が大きく変わると思います。

―これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

SNS でシェアする

トップへ戻る