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循環型社会

最終更新日:2021年11月30日

インタビュー・文 /北村胡桃 写真/ 江副真文

倒木やナラ枯れした木は捨てられてしまう。
でも、木の質感がいいものは
捨てずに活用してみようと考えたんです。

神戸芸術工科大学 準教授

曽和 具之 さん

大学でプロダクト・インテリアデザインを教えながら、
ライフワークとして、間伐材・派生材の活用や田んぼなど
循環型社会構築を実践するアートワークプロデューサー。

web site 神戸芸術工科大学
https://www.kobe-du.ac.jp/faculty_member/sowa-t/

 

先生は間伐材の活用に取り組まれていますが、神戸市にはどんな課題がありますか。

神戸市内では、公園管理、庭木、大学の緑地で伐採された木がたくさん出ています。私は、それを間伐材とは言わず、派生材(伐採材)と呼んでいます。
2018年に台風20号、21号が関西を直撃し、大きな被害が出たことから、倒木の問題が全国的にクローズアップされはじめました。神戸市でも樹齢30~40年のケヤキを大量に伐採しました。切られたケヤキは販売用ではないので、使われずに処分されています。
また、「ナラ枯れ」という現象も問題になっています。ナラ枯れはドングリの木などナラ系の木が、虫に食われて枯死してしまう現象のことです。ナラ枯れは昔からあるのですが、昔は自分たちで山を管理して、ナラ枯れが広がらないように伐採し、燃やすことができました。しかし、現代の都市近郊の山は、木が手付かずのまま大きくなりすぎて、簡単には伐採できない状態になっています。特にナラ枯れは、樹齢30年以上の放置された木に起こりやすいのも深刻化した原因です。木の内部から侵食していくので、見た目ではわからず、ある日突然枯れてしまう。倒木の危険もあります。
このナラ枯れした木は、伐採しても材としては使われず、捨てられてしまいます。でも、これ、木の質感はすごくいいんですよね。家や家具づくりは無理でも、何かに活用できるのではないかと考えたんです。

木がごみになる…今まで考えたこともありませんでした。先生は大量に出た派生材でどんな取り組みをされたのでしょうか。

私が勤める神戸芸術工科大学では木工のコースがあって、工房もあるのですが、実はそこで使われている木材は、輸入材かホームセンターで買っていました。派生材の現状を知ってから、木材は意外と身近なところにあるのに、それを捨てて、わざわざ外国から買っているのはおかしいのではと考えるようになりました。
そこで、デザインを専門にした大学が、派生材を活用する方法がないかを考え、現在さまざまな人の協力を得ながら、派生材の活用を進めています。
まず、大学の授業に派生材を取り入れることです。最近では助手の先生が中心となり、JR摂津本山駅近くにあるパン屋「日々ケルン」の天井に飾る木の装飾を、杉の木の伐採から製材乾燥までを手がけました。
次は丸太ベンチ。六甲山の間伐材活用や家具づくりを手がける「シェアウッズ」と協力して、地下鉄谷上駅の北側にベンチを設置しました。あいな里山公園や、神出山田自転車道にあるBE KOBEオブジェの近くにもあります。
また、作品とは別にワークショップでも活用しています。大学や公園で切られた派生材を使ったバードコールとペンダントをつくるワークショップをこべっこランドで実施しました。「公園に生えていた木なんだよ」と子どもたちに説明すると、親御さんの方が興味津々でしたよ。

先生は、派生材の活用の他に、あいな里山公園で「田んぼ」をされているとか。どんな取り組みか教えてください。

きっかけは子どもたちとのワークショップで、巨大な卵を作ったとき。その卵を入れる巨大な巣を藁で作ろうと思って、藁をホームセンターに買いに行ったら、予想以上に値段が高くて。農家さんに尋ねてみたら、「藁は刻んでしまうからない。藁が欲しかったら田んぼをやったらいい。」ってアドバイスされたんです。それがきっかけで田んぼを始めました。
今はあいな里山公園で学生たちと田んぼをしながら、環境とデザインをどうつなぐか、神戸の希少種のことや生物多様性を、どうやって子どもたちに教えていくかをテーマに、多様なメンバーと一緒に活動を続けています。
実は里山公園でもごみの問題があるんです。それは年間150トンも出る草ごみ。年2回業者に依頼して一気に刈り取るため、野焼きや堆肥にできる量を超えてしまっていて。結局、派生材と同じように処分するしかないんです。
そこで、公園をいくつかのエリアに分割し、それぞれを活動団体が草刈の管理をするという取り組みを始めました。草ごみは、自分たちのエリアは自分たちで管理することを徹底すれば、発生しないごみなんです。野焼きや堆肥など、ごみを出さずに里山公園内で循環できる仕組みを作ろうと考えています。

先生は大学やあいな里山公園など主に神戸がフィールドですね。神戸の街で取り組むことの可能性をお聞かせください。

 

神戸は都市ですが、すぐそばに山や海があります。山と海の街だからこそ、神戸の山は間伐材や派生材を市内で有効活用して、ごみを出さずに循環していると言えたらいいなと思います。山がきれいになると海もきれいになりますよ。

大学で学生に教える立場として、学生の環境への意識に変化を感じますか。

大きく変わりましたね。20年前の花形は工業デザイン。車や家電を作りたい、東京に行きたい、作るならプラスチック製品という時代でした。
劇的に変わったと感じるのは10年前です。暮らしや環境に結び付けた教育が盛んになってきた頃でしたが、東北の大きな地震を境に、インテリアデザインや家具など、内装への関心がさらに高まりました。素材も、環境負荷が少ないもの、リサイクルできるもの、地産地消できるものを作りたい、と意識する学生が多くなりました。

デザインや制作ができる芸工大生だからこその環境への関わり方がありそうですね。先生ご自身がこれから挑戦したいことはありますか。

保育施設、駅前の一時預かり所で、神戸の派生材を使ってもらえるよう計画しています。木育という意味も含めて、地元の材を使うことができないかなと。
そして今後は、派生材に新しい価値を付けたいと考えています。製品のクオリティや利用方法という点だけでない、全く違う価値を付けられないかと考え続けていたのですが、最近「炭素を保有する」という考えに行き着いたんです。
例えば、大学内の山は全体での炭素量は約30トンと試算されます。その山から出た使い道のない派生材をごみとして燃やすと、二酸化炭素が大気中に排出されてしまう。そこで、派生材をペンダントやフレームに加工して人々に分配するんです。その際に「地域の炭素の一部を持つ」「長く使い続けることで炭素を保有し続け、二酸化炭素を排出しない」という考え方を取り入れていくと、人々の木への意識が変わって面白いのではないかと考えています。

最後に、先生の初めての「環境にやさしいアクション」は何ですか?

約15年前、大阪で行ったプロジェクトで、海に大量の流木が流れ着く問題啓発のために、流木を拾い集めてオブジェを作ったことです。山からも海からも流れてくる流木の量と大きさに驚き、環境問題の断片を見ましたね。

―これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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