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最終更新日:2025年9月10日
お弁当1箱分のプラスチックを誰もが食べている!?
〜水族館で、見て、作って、“海ごみ”を知る〜
「このままでは、海の魚よりもプラスチックごみの方が多くなってしまうかもしれない」
最近、こんな話を耳にしたことはありませんか?
もしかしたら、ちょっと遠い世界の話に感じるかもしれません。しかし、今のペースで海洋ごみの増加が進めば、2050年には魚よりプラスチックごみ(プラごみ)の総重量が多い海になる可能性が高いという予測が発表されています。※1 そして、その海ごみの80%は私たちが暮らす街からやってきていることも明らかになっています。
外出先でつい「これくらいなら」
私たちの「ちょっとしたこと」が、海のごみ問題につながっている。そう気づいたとき、子どもたちにも、大人にも「じゃあ、どうすればいい?」という気持ちが生まれます。
この夏、神戸・新港町にある劇場型水族館AQUARIUM×ART átoa(アトア)で、そんな海とプラスチックごみとのつながりを、親子で楽しみながら学ぶ環境企画展「プラスチックの海〜変えられる未来〜」が開催されました。
※1参考:WWFジャパンWEBサイト「海洋プラスチック問題について」、McKinsey & Company and Ocean Conservancy(2015)
リアルに見て、感じる海ごみのモンダイ

▲ウミガメがいる海岸に海ごみとしてプラスチックが流れ着いた様子が表現されたジオラマ展示
ウミガメが棲む海岸に、プラスチックのかけらや、誰かが捨てたプラスチック容器が流れ着いている——アトア3階FOYERエリアには、生きものと海の現状を表現したジオラマが設置されています。生きものが泳ぐ水槽や書籍が置かれた部屋の一角にある展示の前では、「そういえば、さっき歩いてきた海岸沿いにもプラごみが浮かんでたね」、「プラごみってこんなに小さくなるんだね!」そんな声が聞こえてきました。
海の生きものを間近に感じる場で見て話しながら学べるように展示パネルで紹介されていたのは、陸→川→海とつながっていくプラごみの行方と生きものへの影響です。海洋プラスチック問題が「自分たちにも関係あること」と気づくきっかけとして、やさしい言葉とイラストで解説されていました。
今回の展示では、驚くべきことに「人間が1年間に体の中に取り込んでしまっているプラスチックの量は、少なくてスプーン山盛り1杯、多くてお弁当1個分ほど※2」と言われていることも紹介されました。
※2 世界自然保護基金2019年調査。小さなお弁当一食分:約250g

▲PUBLICIS GROUPE JAPAN/ゴミライプロジェクト作のポスター
8月7・8日には、親子で参加できる体験型ワークショップ「プラごみ弁当を作ろう!」(共催:PUBLICIS GROUPE JAPAN/ゴミライプロジェクト)が開催されました。
これは、1年間に体内に取り込むプラスチックの量を“見える化”するユニークな取り組み。
このワークショップは、実際のプラごみ(きれいに洗われたもの)を使ってお弁当をつくり、「これを1年で食べちゃってるかも?」と実感を持って学べるように企画されました。
子どもたちは「色んな種類のプラスチックがあるね」「これよく使っているものだね」と話しながら、カラフルな素材をひとつずつ選んで、まるでお弁当を詰めるように作品づくりを楽しんでいました。
「できたよ!……でも、こんなに食べてるかもしれないなんて、ちょっとびっくり」といった声も聞かれ、子どもたちが、遊びを通じてちゃんと“気づき”を持ち帰る姿が印象的でした。
- どうやっていれようかな?
- 出来た!
完成した“プラごみ弁当”は、そのまま持ち帰りもでき、参加した親子には家に帰ってからも「このごみ、どこから出てきたんだろう」「うちではどうすれば減らせるかな?」といった会話が自然と生まれる――手を動かし、プラスチックの重みを感じながら、環境への理解を深めていました。
このワークショップは2日間限りの開催で、海ごみ企画展は8月31日まで開催されました。会場では、これまで制作された“プラごみ弁当”の一部が作品やパネル展示で紹介されており、来場者が引き続き「見る・知る・考える」体験ができるような展示が行われました。
企画展と同時期には、作った“プラごみ弁当”を通じての学びを写真と共にシェアする「ゴミ弁当コンテスト2025」(主催:PUBLICIS GROUP JAPAN/ゴミライプロジェクト)も開催されました。昨年好評を博し今回2回目の同コンテストは、誰でも気軽に挑戦できる環境アクションとして全国的に広がっています。

昨年の「プラごみ弁当コンテスト2024」グランプリ作品
当たり前のように使って何気なく捨てていたプラスチックが、気づけば海に辿り着いて魚に取り込まれ、回り回って自分たちの口に入ってしまっているかもしれない。海ごみ企画展や“ごみ弁当づくり”は、そんな日常を少し立ち止まって見直すきっかけになったようでした。
身近なごみの観察からできる「ごみ調査レポート」
企画展であわせて配布されていた「ごみ調査レポート」は、身近な場所に見られるごみの種類や量を記録し、観察することで、自分の暮らしと環境とのつながりを発見できるシートです。
SDGs学習にもぴったりで、親子でのフィールドワーク教材にもおすすめ。
どんなごみが、どこに、どうして落ちているのか?
くらしのなかのごみを観察することで、環境とのつながりが見えてきます。
やり方は簡単!アトア公式WEBサイトからこの教材シートをダウンロードで、いつでも挑戦できます。
近所の公園や川沿いなど、日常のなかで観察しやすい場所を選び、
- どんなごみがあった?
- どこから来たものだと思う?
- どうすれば減らせる?
といった問いに向き合いながらワークシートに記録していくと、レポートを完成させることを通じて様々な気づきが得られるようになっています。
小さな気づきから、より良い海の未来へ
いつでも取り組むことができるごみ調査レポートは、身近なくらしとごみからの学びとして気軽にできるSDGsアクションの一歩に。
「これ、どうやって捨てたらいい?」「そもそも、いらなかったかもね」、、、小さな気づきから、毎日の選択をちょっとだけ変えていく。それは、海のよりよい未来につながっています。
ごみのこと、くらしのこと、そして海のこと。
日々使うプラスチックごみに向き合って、“弁当ひとつ分”の気づきを未来の海につなげていきませんか?
関連リンク
海洋プラスチック問題についての解説:átoaで学べること「プラスチックの海」
みんなで考えよう!海のプラスチックごみ問題(YouTube動画)
海洋プラスチックごみ問題解説動画「プラ島太郎」(YouTube動画)
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