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循環型社会

最終更新日:2024年6月5日

衣服の原料から廃棄まで、
ファッション産業の常識を超えていく。
ワールドが挑む、ファッションをサステナブルに楽しめる未来。

株式会社ワールド
SDGs推進室 芦硲光久さん
IR・グループコミュニケーション室 中村香代子さん

 

みなさんは、服を長く大切に着ていますか?そして手放すとき、どのような選択肢を考えるでしょうか。実は私たちに身近なファッション産業は、材料調達から製造、販売、廃棄までの一連のプロセスで、CO2排出などの環境負荷が大きいと言われています。これから先も長くファッションを楽しむためには、ファッション産業の仕組みの変革が必要です。そこで今回は、この問題に先駆的に取り組む株式会社ワールドの芦硲さんと中村さんにお話を伺いました。

環境にも自分にも嬉しい衣料品回収の仕組み「ワールド エコロモ キャンペーン」。

衣料品店で行われている、衣料品回収のサービスを利用したことはありますか?今では一般的になった衣料品回収ですが、その先駆けとして2009年にワールドグループが始めた衣料品の回収キャンペーン「ワールド エコロモ キャンペーン」があります。お客様が使わなくなった衣料品を回収しリサイクルパートナー企業へ販売し、その収益金を被災地や社会貢献活動に寄付する仕組みです。これまで百貨店、ショッピングセンターを中心に、衣替えの季節である春と秋に開催してきました。できる限り利用のハードルを下げようと、他社の商品の持ち込みも可能にしています。リユースするため、汚れたものなどは回収できないことを事前にお客様にお伝えしているので、きれいな状態の衣料品が多く集まります。リユースが難しい場合は、リサイクル繊維に変えて、クッション材などに利用。また、収益金の寄付だけでなく、ワールドグループのブランド店舗で使えるお買い物チケットがもらえるという、お客様にとって嬉しい特典もあります。
今後はエコロモ キャンペーンをさらに拡大し、これまで年間100万枚回収していたところから、2030年にはその10倍の1000万枚回収が目標です。実現のため、イベントへの出店やショッピングモールへの展開、店頭での常時設置などが始まっています。

中村さん
私たちアパレル企業は、お客様にお洋服をできるだけ長く大切に着てもらいたいという思いがあります。一度不要になった洋服が、新たな方の手に渡りまた活躍してくれることは、洋服も私たちにとっても、とても嬉しいことです。ワールド エコロモ キャンペーンは、四方よしになるような形を目指しこれまで取り組みを続けてきました。

芦硲さん
最近お客様の中に、クリーニング店で綺麗にしてからお店へ持ち込む方や「チケットはいらないので寄付に回してほしい」とおっしゃる方がいて。長年取り組みを続ける中でキャンペーンの想いが伝わり「次の人につなげて役立ててほしい」という意識の方が増えてきていると感じます。

CO2排出量が多いファッション産業。LED化や再生エネルギー化など、できることを責任持って進めていく。

ファッション産業のCO2排出量は、世界市場のおよそ1割。原料調達から製造、廃棄まで、あらゆる場面でCO2を排出しています。ワールドグループは、より一層責任感を持って環境への取り組みを進めていきたいと考え、2030年に「自社の直接負荷(スコープ1と2)のCO2排出量50%削減」「関節負荷である商品(洋服)1点のCO2排出量20%削減」を目標として打ち出しました。事業に関わるすべてのCO2排出量を見える化し、その数値をもとに細かく目標を定めて具体的なアクションを進めています。たとえば、神戸と北青山にあるオフィスや自社工場では、再生エネルギーへの切り替えが完了しました。他にも、全国で約2200ある店舗のライトのLED化や、輸送に関わる排出量削減も進めています。

CO2排出量が最も多い「原料」を見直し、サステナブルな素材ブランド「CIRCRIC(サーキュリック)」が誕生。

衣料品の製造プロセスの中で最もCO2排出量が大きい場面が「原料調達」です。たとえばウールは、羊を育てるところから換算するため、排出量は膨大になります。CO2排出量を削減するためには、原料をできる限りサステナブルな素材に切り替えていく必要があります。そこでワールドグループはサステナブル素材の開発を他社と連携して進めました。また、素材ブランド「CIRCRIC(サーキュリック)」を誕生させ、昨年2023年秋から販売をスタートし、導入が進んでいます。対象商品には「サーキュリック」のタグを付け、目に見えて分かるようにしています。

芦硲さん
再生素材は、一般的な素材と感触を比較しても全く遜色がないんです。イベントでサーキュリックの素材を展示して、来場者の方に実際に触れてもらうことがあるのですが、「全然違いが分からない!」というお声をいただいています。ぜひ一度、実際に触れてみてほしいですね。

店舗の納品時に出る使い捨てのダンボールやハンガー。常識を見直し、資源を循環させる。

製造過程だけでなく、販売過程でもできることがあります。たとえば、納品などで大量に使用するダンボールを活用したショッピングバッグなど循環の取り組みやハンガーのリユース、ハンガーカバーなどのビニールのリサイクルなどを推進しています。このように、今までの常識を見つめ直し、資源を無駄にしない新たな仕組みづくりをひとつひとつ着実に進めています。

芦硲さん
私が所属するSDGs推進室が中心となって進めていますが、店舗数が多いですしグループ会社は50ほどあるので、グループ全体での理解と協力がなければ実現できません。社員の意識を上げる取り組みの一環として、社員向けにSDGsの研修を始めました。最近では、販売スタッフが自発的に回収用にハンガーを分別してくれるなど、徐々に協力いただけるようになってきました。

2025年までに衣料品の廃棄をゼロにする。作ったものを最後まで見届ける仕組みづくり。

ファッション産業でもうひとつ課題になっているのが「廃棄」です。ワールドグループは「2025年までに衣料品の廃棄ゼロ」という大きな目標を掲げました。製造時は「過剰に作らないこと」を心がけます。そのためにはこれまで以上に需要と供給を見極め、計画立てなければなりません。そして、販売時は「最後まで廃棄しないルート」を確保。店舗で売れ残ったものはファミリーセールやアウトレットモールなどで販売し、最終売れ残ったものはリサイクルして新しい製品に生まれ変わらせるという流れを作りました。

芦硲さん
とりあえず沢山作ればいい、沢山売ればいいという「大量生産・大量消費」の考え方はもう古くて。お客様も、「お金を出してもいいものがほしい」「環境に配慮してほしい」など、服に対する意識が変わってきていると感じます。いかに求められているものを求められているときに無駄なく作るかという判断が重要になってくると考えています。

工場で出た残布を利用したワークショップを開催。お客様も店舗スタッフも、一緒に環境を考える機会に。

お客様にワールドグループの取り組みを周知し環境の意識を高めてもらおうと、工場で出た残布を材料にアップサイクルのワークショップを百貨店やショッピングモールで開催しています。店舗スタッフが講師となり、大人から子どもまで多世代が参加。全国各地で開催し、2023年度は1万人もの参加者がありました。作品のラインナップは、クリスマスリースやみつろうラップ、ストラップなど。開催店舗のブランド商品の製造中に出た残布を使うのがこだわりです。

芦硲さん
ブランドのファンからは「あの商品の生地だ!」と喜んでもらえ、より身近に環境問題を考えてもらうきっかけになっています。また、ワークショップを開催する店舗スタッフとしても、お洋服を売るだけではなく、新しい形でお客様とコミュニケーションを取れる良い機会になりますし、環境への意識が高まります。

お客様の手元に衣料品として再び戻るループの完成を目指して。

サステナブルな取り組みを大きく進めてきたワールドグループ。今後は、エコロモ キャンペーンで引き取った衣料品の中でリユースできない製品を素材に戻し、新たな衣料品として生まれ変わらせる“クローズドループ”の完成も目標にしています。

芦硲さん
神戸の企業として、神戸の市民の方々にもっとアピールしていきたいと考えていて。エコロモ キャンペーンなどのリユース事業は、神戸市のごみ削減にもつながります。創業の地である神戸から発信し、ファッション産業全体を変えていきたいです。

 

服を買う時と買った後に少し意識を変えるだけで、私たちも環境問題に貢献できる。

持続可能なファッションを実現するには、企業の取り組みに任せるのではなく、私たちひとりひとりの行動も変えていかなければいけません。個人で簡単にできるアクションを芦硲さんが教えてくれました。

芦硲さん
何か特別に頑張らなくていいんです。買う時、買った後に少し意識をすればそれだけで環境問題の改善になると思います。買う際には、この製品がどこから来ているのか、どういった原料を使っているのかを注目してほしいですね。再生素材を使っているものがあれば選んで買ってほしいですし、リサイクルショップや古着屋も積極的に活用していただけたら。買った後は、洗濯のときにネットに入れるひと手間だけで、断然長持ちします。少し破れたらお直しをするのもひとつです。そしてどうしても着られなくなったときは、回収ボックスに入れて次の人につなげていっていただければと思います。お洋服を愛してあげてくださいね。

取り組みを通して社員の皆さんの環境への意識も高まっています。お二人に普段行っている環境にやさしいアクションを尋ねると、芦硲さんは「車をシェアすること」、中村さんは「料理をする際にスパチュラを利用し、材料を無駄なく使い切って水を汚さないこと」を意識しているのだそう。みなさんも、日常の小さなことから意識を変えてみではいかがでしょうか?
また、取材の中で、芦硲さんの「洋服を愛してほしい」という言葉や、中村さんの「長く着てもらえるとお洋服も、私たちも嬉しい」いう洋服に対する愛情を感じる言葉が印象的でした。私たちの生活を豊かにしてくれるファッションが環境に負荷をかけているのはとても悔しいこと。洋服が好きな人たちが一緒になって取り組めば、「ファッション産業は環境にやさしいもの」という認識が当たり前になる世の中がきっとやってくるはずです。

 

株式会社ワールド

Web site
https://corp.world.co.jp/

ワールド サステナビリティプラン
https://corp.world.co.jp/csr/pdf/world_sustainabilityplan_2022.pdf

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