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アップサイクル循環型社会

最終更新日:2024年10月2日

リサイクルシルバーを使った、一生もので一点もののジュエリー。
デザインの力で、日本の廃棄をゼロにしたいんです。

SAND DESIGN
砂田安菜さん

高校卒業後イタリアに渡りIstituto Europeo di Design Milanoにてプロダクトデザインを学ぶ。卒業後は、ミラノのデザイン事務所に約2年所属。帰国後グラフィックデザイナーを経て、2021年SAND DESIGNとして独立。社会課題解決に取り組むブランドやビジネスをデザインでサポートしている。2023年にはオリジナルブランド「RINMO」を立ち上げ、リサイクルシルバーを使用したエシカルジュエリーをリリース。

SAND DESIGN Web site
https://sand-design.jp/

RINMO Web site
https://rinmo.jp/

RINMO Instagram 
https://www.instagram.com/rinmo_official/

-砂田さんはオリジナルブランド「RINMO」を立ち上げ、リサイクルシルバーを使ったジュエリーを制作しています。どのような経緯があったのでしょうか?

イタリアの大学でプロダクトデザインを学んでいた頃、教授がよく「デザインは課題解決だ」と言っていて。イタリアに住んでいるとき、社会課題を身近に感じる機会が多くありました。難民の方が多く、人種差別もあって。環境に対する意識も日本と全く違う。社会課題を体感する中で、デザインに課題解決の力があるなら、私は社会課題を解決したいと思ったんです。ものを生み出す仕事をしていくから、大量生産大量廃棄の問題をどうにかしたいって考えていました。日本に帰国してジュエリーを作る前は、アパレルの廃棄を減らしたい想いで神戸の北野で古着屋さんをしていて。アパレルの廃棄を減らす活動は好きでしたが、古着屋さんの形態は他の人でもできる。自分しかできない何かをしたいとずっと思っていました。模索しているとき、ジュエリー職人さんと出会って「リサイクルシルバーで、一緒に挑戦してみませんか」って誘ってもらったんです。もともとファッションが好きで、アクセサリーは自分で作るほど好きだったので、やってみたいと思って始めました。

-ジュエリーに使われている「リサイクルシルバー」はどのような特徴があるのでしょうか?

RINMOで使用しているリサイクルシルバーは、廃棄されるレントゲン写真や家電などに含まれる銀を精製して作られたものです。その中でも、純度99.9%の純銀を使っています。一般的なシルバーのアクセサリーの多くは、他の合金を混ぜ強度を出して型に流し込んで作るのですが、純銀はとても柔らかいため、型に流してもうまく形になりません。銀の塊を金づちで叩く「鍛造」というアナログな方法でのみ、作り上げることができます。この技法ができる職人さんがまず少なくて。しかもリサイクルシルバーは需要が少なく、さらに純銀となるとほとんど流通していないため、加工がしやすい棒状ではなく粒状で届くんです。粒状の銀を溶かして板状にするという工程をこなせる職人さんは限られます。職人さんの高い技術によって、扱いが難しく手間のかかるリサイクルシルバーをジュエリーにアップサイクルすることができました。銀には鉱山の労働環境や児童労働などの社会問題もあります。私たちのブランドは、その問題に加担しない素材を使っていることを表明して、ジュエリーを身につける人の罪悪感を減らしたいと思っています。

-RINMOのジュエリーはどれも曲線が特徴的で、力強いデザインですね。どんなコンセプトがあるのでしょうか?

もともと私はネガティブな性格だったのですが、ファッションが好きになってからマインドがどんどん明るくなっていきました。アクセサリーをつけた瞬間に、「自分が強くなれる気がする」感覚がありました。その原体験から、みんなの「心の武器」になるような、「強くなれる」気持ちが引き出せるようなデザインにしたいと思って作っています。シリーズは毎回、「自然界の強さ」をテーマにしていて。始めて作ったコレクション「Concordiana」は、南アフリカで育つ「コンコルディアナ」という植物をモチーフにしています。葉っぱをくるくる巻いて、自分で影を作って自分の根っこを直射日光から守る特性があるんです。自分で守っていく姿がいいな、と思って作りました。2番目のコレクション「Roots」は、植物の根っこの断面がモチーフ。植物の根っこって、普段は見えないけれど地上部を支えていますよね。そういう“支える”っていいなと思って。今年の秋は「地層」というコレクションを作りました。何万年もの時間をかけて積み重ねる地層から、“時代をかけていく強さ”を表現しています。

-リサイクルシルバーを中心としたアイテムが並ぶ中、「Roots」のコレクションには、黒やブラウン、ピンクに光る“宝石のようなもの”が使われています。何でできているのでしょうか?。

実は「眼鏡のフレーム」なんです。眼鏡のフレームって板を切り出して作るのですが、レンズを入れる部分は必要なくて、大量に捨てられている現状があります。プラスチックではなく「セルロースアセテート」という特殊な素材で、加工がしづらくてリサイクルすることが難しいんです。なんとかしたくても、私一人ではどうにもならなくてずっと諦めていました。ジュエリーをやると決めたとき、職人さんに「この素材、削ったり磨いたりできますか?」と相談したら、「やってみます」って言ってくれて。職人さんが研磨していくと、想像以上に綺麗なツヤが出たんです。

-環境に配慮したジュエリーとして、デザインへのこだわりはありますか?

決めているのは、「一生もの」であることです。そのために、壊れない構造を意識しています。アクセサリーは金具の部分が壊れやすいので、RINMOでは金具の部分をなくすデザインにしています。素材がサステナブルであったとしても、アクセサリーそのものが長く使えるものでないといけないと思うんです。

-毎回、自然をテーマにしているのは、自然が好きだからなのでしょうか?どのようにデザインを作っていくのかが気になります。

自然が特別好き、という訳ではないんです。でも自然に対して「不思議だな」「面白いな」っていう好奇心からデザインが生まれていますね。実際、コンコルディアナを買って観察したり、顕微鏡を買って断面を見たり、淡路島で見た地層にかっこいいと感じたり…。スケッチをしてデザインを決めた後は、粘土で100個以上試作を作って理想の形を探ります。最終的には職人さんと会話をしながら形を決めていきます。

-ブランド名「RINMO(リンモ)」に込められた想いを教えてください。

不要とされてしまう素材を「リンネの輪にもどす」という意味を込めて、「RINMO(リンモ)」と名付けました。この想いは、ブランドの軸として絶対にぶれないようにしようと決めていて。リサイクルシルバーに限らず、素材を活かしたプロダクトや捨てられてしまう素材を生かしたプロダクトを作っていきたいですね。ジュエリーだけだと間口が狭いので、将来的にはインテリアや雑貨も、軸をぶらさずにできたら面白いかなと思います。

-ネット販売だけでなく、ポップアップでの対面販売も進めているそうですね。どのような方がRINMOのジュエリーに興味を持っているのでしょうか?

ブランドの想いに共感して購入してくださる方が多いのですが、純粋にデザインがいいと思って見てくださる人も多いですよ。日本では社会問題に関心がある方がまだまだ少ないので、これからブランドを大きくしていくためには、響かせないといけないのはデザインの部分かなと。サステナブル以外の要素で勝負できるプロダクトにしていきたい想いが強いです。「デザインがよくて買ったものが、結果的には社会にとっていい買い物だった」という流れを作るのがベストだなと思っています。今後、神戸でのポップアップも計画しています。ネットでなんでも簡単に買える時代ですが、「買ってみたけど、結局似合わなかった」といった失敗をよく聞きます。以前対面で販売したときに「自分に何が似合うか分からないから、選んでほしい」という方が結構多かったんです。これから予定しているポップアップでは、ジュエリーを販売するだけでなく、骨格診断とパーソナルカラー診断のプロの方も参加していただいて、自分に似合うアイテムを見つける機会を作りたいと考えています。それもまた廃棄を出さないひとつの方法かなと。

-砂田さんは富山県出身とのことですが、今は神戸を拠点に活動されています。砂田さんにとって、神戸の魅力は何ですか?

神戸にはいい建築が沢山ありますし、まちだけでなく海も山も近いですよね。デザインするときに、それら全てがインスピレーションになります。あと、KOBEゼロカーボン補助金など、行政のサポートが手厚いのもとても助かっています。神戸市内のつながりで新しい商品が生まれることもあります。フレームの端材は市内のメガネ工房さんにご提供いただいていますし、今私が身につけているチョーカーは、市内で出会った方がディレクターをしているアパレルブランドさんの余剰生地をジュエリーと合わせて作ったんですよ。

-お話を聞いていて、砂田さんの行動力や好奇心に刺激を受けます。「環境問題に対して何かしてみたい」と考えている人へ、アドバイスはありますか?

RINMOのジュエリーは2023年の秋にやることが決まって、その3か月後にはリリースしました。リリースしてすぐに、イタリアの展示会で出品もしましたね。今は発信がしやすい時代です。「ブランドを作りました」と言えば、ブランドになる。SNSのアカウントを作って作品を載せたり、ネットショップを始めたり。行動するハードルはどんどん下がってきていると感じます。あまりいろいろ悩まずに行動してみたらできると思いますよ。

-「RINMO」はリサイクルシルバーやジュエリーにこだわらないブランドだということですが、これから挑戦したいことや展望を教えてください。

私が作りたいものを先に考えるのではなくて、廃棄を起点に考えていこうと思っています。舞台関係の方からセットの廃棄が多いという話を聞いたり、車屋さんから回収されない部品があるという話を聞いたり。現場で課題になっているところから発想して提案していく流れが理想だなと。
最終的には、日本の廃棄をゼロにしたいんです。リサイクルシルバーを「レントゲン写真からできているのがめちゃくちゃかっこいい」って言って買ってくれた人がいたのですが、「アップサイクル」にはロマンがあると思っていて。今は「リサイクル」という言葉が安っぽいような悪いイメージがついていますが、そのイメージを変えていきたいですね。

 

-最後に、普段環境問題に関して、取り組んでいることや気をつけていることはありますか?

使い捨てないとか、物を大切に使うとか、「気をつける」のではなくてその生き方のほうが「納得できるし美しい」と思ってやっています。たとえば先日、地元のカフェでテイクアウトの飲み物を注文したときに「30mぐらい離れたところに行くから、使い捨てのコップでいいです」と店員さんに伝えたら、店員さんが「使い捨てのコップだと寂しいから、マグカップに入れて30m先まで持って行くよ!」って言ってくれて。環境負荷がどうとかじゃなくて、その方が美味しく見えるからとか、美しいからみたいな理由で動いてくれたことが、すごく嬉しかったですね。

-これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

 


この取り組みは、神戸市が実施しているKOBEゼロカーボン支援補助金制度を活用しています。

【KOBEゼロカーボン支援補助金制度】
2050年二酸化炭素排出実質ゼロの実現に向け、神戸の豊かな自然や環境を活かし、自由な発想による先進的で創造性に富んだ、地域貢献につながる取組みにチャレンジする市民、団体、法人などを積極的に支援する神戸市の補助金制度です。
https://www.city.kobe.lg.jp/a36643/zero_carbon_aid.html

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