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リユース

最終更新日:2025年1月15日

古着の通過点を増やして、リユース率を上げていきたい。
資源も人もつながり続ける塩屋の古着屋さん。

シオヤコレクション

澤井まりさん
田中若菜さん
mannaさん
淸造理英子さん
楠本晶子さん

 

みなさんは、古着を生活に取り入れていますか。古着は私たちが気軽に取り組める環境にやさしい取り組みのひとつ。そんな古着をもっと自分の気分を豊かにしてくれるように着こなして、もっと目に見えて社会の役に立っていると分かったら、楽しく続けられると思いませんか?今回は、そんな楽しみ方を実践している人たちがたくさん集まる、神戸にある古着屋さん「シオヤコレクション」の取り組みをご紹介します。

 

地域や環境、みんなにやさしいお店「チャリティショップ」。

塩屋駅を下車し、コロッケ屋や魚屋を横目に進み、一本路地に入ると黄色い正方形の看板が見えます。ちらちらと覗いていると、シオヤコレクションのメンバーの皆さんが「ようこそ」と扉を開いてくれました。お店に入ると、真っ青な壁と、色とりどりの古着が目に飛び込んできます。天井までぎっしりと飾られた古着の数々。ぱっと明るいピンクやシルバーのパンツ、どこか懐かしく新しい花柄のジャケット。一つ一つ違っていて、カラフルで個性的なものばかりです。取材当日お店はお休みで、メンバーが集まって、古着の仕分けやミーティングを行う日。今日は貴重な時間をもらって、メンバーの皆さんにお話を聞きにきました。

シオヤコレクションは、2021年にオープンした日本では珍しい「チャリティショップ」。寄付された衣料品を販売し、売り上げの一部を支援団体へ寄付するという形式のお店です。服を持ち込んだり購入したりするだけで、社会に貢献することができます。また、服を捨てずに回す「リユース」が進み、世界で社会問題となっている衣服の大量廃棄を防ぐ、環境にもやさしい仕組みです。シオヤコレクションは「できる限り焼却せず、国内で最後まで活用すること」を意識して、さまざまな工夫を凝らしています。

シオヤコレクションのお店は、個性的な服を揃え20代~50代がターゲット。一方、普段使いができて世代を問わない服は、シオヤコレクションから徒歩5分ほどの場所にある、サテライトのお店で販売します。さらに、県内のチャリティショップや福祉施設と連携し、出す時期を替えたり、売る場所を変えてみたり、来年に持ち越してみたりと試行錯誤しながら、次の持ち主へとつなげていきます。シオヤコレクションで対応しきれなかった衣服は、板宿のチャリティショップ「FREE HELP(フリーヘルプ)」へ託し、販売されるほか、施設や病院で活用されます。最終的に売ることができない状態の服などは、ウエス工場へ。お洋服を持ち込む方の多くは近所の人。中には「シオヤコレクションなら丁寧に活用してもらえる」と遠方から送ってくれる人もいるのだとか。

形が古いものや、生地が重いもので売れにくい服は、生地として活用したい人につなげています。売るだけでなく、洋裁が得意な近所の女性が担当する、早くて丁寧なお直しのサービスもあるのだそう。ここでは、店頭販売に限らずに行き先を探していく、徹底したリユースの仕組みが構築されています。

売り上げの一部は、塩屋や神戸で活動する団体「NPO法人 Giving Tree」と「音遊びの会」に寄付しています。さらに、お店のポイントカードでポイントを貯めると、塩屋のアーティストのグッズと交換できる仕組みも。店内には、かわいいポストカードなどのグッズが並んでいました。お洋服を買うことが誰かの支援になり、まちの活性化にもつながっていくのです。

チャリティショップに心惹かれた二人。塩屋にもこんな場所があったら。

シオヤコレクションは、澤井まりさんと田中若菜さんが立ち上げました。きっかけは、二人がチャリティショップの草分け的存在であるFREE HELP(フリーヘルプ)のお客さんだったこと。FREE HELP(フリーヘルプ)は、日本でチャリティショップがほとんどない15年前に新長田でオープンし、現在は板宿にあります。イギリスのチャリティショップをモデルにしつつ、日本のチャリティショップの形を築いていったお店なのだそう。チャリティショップを塩屋にも作りたいという気持ちが芽生えた二人はたまたま塩屋住まい。意気投合し、とんとん拍子でシオヤコレクションが実現していったのでした。澤井さんと田中さんは、チャリティショップのどんなところに惹かれたのでしょうか。

澤井さん
ものを買うのが好きじゃなくて、よっぽど気に入ったものしか買わないんです。でも、お買い物って楽しい。そこに矛盾がありました。でもチャリティショップの仕組みなら、お洋服を買うことで何かいいことにつながる。それなら買ってもいいかなって、自分に許可を出すことができたんです。なおかつ、私はものが溢れている社会で、できるだけ今あるものを長く大事に使うことを日常的に心がけていたから、新しく生み出さない古着であることが、私の気持ちに合っていました。

田中さん
まちの中にクローゼットが欲しいって思うほど、お洋服が大好きで。高校生のとき、お洋服の背景にどんな問題があるのか興味を持って調べていたんです。そこでFREE HELP(フリーヘルプ)を知りました。お洋服を楽しみ、お買い物をするだけで寄付ができる仕組みが本当に目からうろこで、素晴らしいと思ったんです。まだ着られても自分に合わなくなった服を持っていくことができて、また活用してもらえる循環が自分の考えにフィットしました。フリマアプリで売っていたこともあるけれど、やっぱり直接活用されていくのが分かるのが素敵だなと思って。

シオヤコレクションに引き寄せられていく人たち。それぞれの強みを活かした関わり方で。

今回お話をお聞きしたのは、運営メンバーの澤井さん、田中さん、mannaさん、淸造さんと、作業ボランティアとして関わっている楠本さん。mannaさんはロゴのデザインを頼まれたのがきっかけで関わり始めました。日本で見たことのない活動が新鮮に映り、面白いことができそうだと思ったそう。今は、SNSやリーフレットなどのデザイン全般を担当しています。やわらかい雰囲気のパンフレットや掲示物がシオヤコレクションらしさを作っているように感じます。そんなmannaさんデザインのパンフレットを駅前で見つけシオヤコレクションを訪れたというのが楠本さん。今は週に1度、お洋服の仕分けなどの作業ボランティアとして参加しています。「月に1回シオコレにお洋服を持ってくる」という家の片付けの目標を立てて、シオヤコレクションに通うように。お母さんから引き継いだお洋服を捨てるには心が痛むけれど、シオコレなら活用してもらえる安心感があって通い続けたのだそう。インスタグラムでボランティア募集の案内を見つけ、少しでも関わりたいと考えて応募しました。フリーヘルプのお客さんだった澤井さんと田中さんが作ったシオヤコレクションで、チャリティショップの魅力に惹かれた人たちがいる。嬉しい連鎖が生まれています。

人手が足りない状況の中、白羽の矢が立ったのが、立ち上げ当初からお客さんだったという淸造さん。ブログの更新やディスプレイのコーディネートなどを担当しています。澤井さんいわく「お洋服のセンスがずれなくて、安心して任せられる」のだそう。淸造さんも、運営側になったことで、洋服の活用についての理解が深まり、持ち込む頻度が増えたといいます。みなさん自然体で、お互いをリスペクトし合っていてとても仲良し。毎週のミーティングは、話が盛り上がって2時間経っていることもあるのだとか。

一緒に壁を乗り超える、関わる人に魅力がある。わたしがシオヤコレクションに関わり続ける理由。

環境にやさしい取り組みの一番大切で難しいところは、継続ではないでしょうか。手間がかかる活動を無理なく続けていくためにはどうしたらいいのかが悩ましいですよね。シオヤコレクションに関わるメンバーのみなさんは、シオヤコレクションにどんな魅力を感じて、関り続けているのかと疑問をぶつけました。

mannaさん
一番は、この場所と、まりさんを見守り続けていきたい、という気持ちかな。日々いろんな問題が起こるし、いろんな壁が出現してもうどうにもならないときもあるけれど、それを乗り越えようと頑張っているまりさんと並走しているイメージ。この場所は続かないと意味がないと思っているので、チャリティショップやシオヤコレクションをまだ知らない人達に知ってもらうために、古着以外の企画も立てて間口を広げいこうとしています。

楠本さん
シオヤコレクションにはいろんな人が共感して、引き寄せられていく引力があると感じていて。そんな魅力のある場所に、ちょっとでも何かお手伝いできたらと思っています。でも一番は自分のためで、自分が共感できることがたくさんあるこの素敵な場所に関わりたいと思っているからかもしれないです。

淸造さん
まりさんの人柄と、今こんな感じでしゃべっているスタッフや手伝ってくれている人たちの人柄とお客さんの人柄と。ここに関わっている人たちの人柄がみんな素敵だなと思うんですよね。シオコレに限らず塩屋全体に言えることかもしれないけれど、まりさんみたいにやりたいことを口に出せば、実際にとんとんと話が進んでいく現象をたくさん見ていて。何かやってみたいと思えば口に出して、どんどんやってみるのって大事なことだなと学んでいますね。

自分の似合うものを探したり、一点ものを見つけたり。古着の楽しみ方。

シオヤコレクションのSNSを見ると、古着を自分らしく楽しむ人たちがたくさん登場します。自分の「好き」に正直になって自分を表現するのは素敵なこと。私も店内で過ごして話を聞いているうちに、古着に興味が湧いてきました。でもどんな風に古着を楽しめばいいのでしょうか。メンバーの皆さんにアドバイスを求めてみました。

澤井さん
自分が似合うものをお手ごろな値段で見つける楽しみがありますよね。探しているうちに、だんだん自分の好みが分かってくるんですよ。私は基本的に、綺麗な色を探してます。シオヤコレクションに持ち込まれる服を選別していたら「なんだこれは!」「どこで売ってるの?」っていう見たことのない服が来たりして。面白いんですよ。

淸造さん
ファストファッションって、ベーシックな形や色が多いですよね。仕事着では重宝するけれど、自分が着たいからというよりTPOに合わせて選んでしまう。古着だと、近所の人たちが持ち込んだいろんなデザインの服があって、中にはハンドメイドとか一点物もある。まずはそれを見るのが楽しいですよね。そのデザインが今はなかなか見ないものや癖のあるもので、私が好みの一着が見つかったら嬉しいですよ。

豆腐屋に行けば何でも揃う!?塩屋は自然と、資源循環が生まれるまち。

シオヤコレクションは、服が行き来する場だけではなく、人との交流も生まれています。塩屋のまちに遊びにきた若い人に塩屋のまちを案内する「案内所」のような役割を担ったり、近所のおばちゃんがおしゃべりに来たり。取材途中も近所の人が澤井さんにみかんを届けに来ていました。これはシオヤコレクションに限らず、塩屋のお店によく見られる光景。中でもその元祖と言われているのが駅前の豆腐屋さん。なんと豆腐屋さんに、本や食器など塩屋のあらゆるものが自然と集まってくるのだそう。皆さん、「塩屋に引っ越してきた子がいたら、まずは豆腐屋さんに行ってみてとアドバイスしている」といいます。他にも、澤井さんは「シオヤコレクションでは子供服が売れないんです。なぜかというと、基本的にママさんコミュニティがしっかりしているから。コミュニティ内で服が回っているんですよね。」と教えてくれました。資源循環が暮らしの中に溶け込む塩屋。澤井さんは「塩屋でシオヤコレクションをするって、結構自然なこと」だと話します。

通過点を増やして、リユース率を限りなく上げていきたい。そのひとつのアイデアが「共同倉庫」。

シオヤコレクションが始まって3年ほど。塩屋での認知がどんどん広がって、寄付の量も増えてきています。最近では、より気軽に寄付できるように、24時間洋服を寄付できるボックスを設置しました。シオヤコレクションは暮らしに浸透していき、「塩屋の人たちは、衣替えの時期にシオコレに持って行く用の袋がある」とのウワサも。澤井さんにこれから取り組みたいことを尋ねると、「リユース率を上げること。お洋服の通過点を増やしたい」と教えてくれました。手間をかければかけるほど人手が必要。シオヤコレクションに関わる人も増やしていきたいのだそう。また、リユース率を上げるためにチャリティショップの「共同倉庫」というアイデアが挙がっています。

澤井さん
シオヤコレクションでは売れないけれど、他の店では売れる服をシェアしたり販売したりする「ハブ」となる場所があればいいなと思っていて。毎回スタッフが受け取りに行く手間が省けます。これからチャリティショップをやりたいっていう人達にとっても心強い場所になると思います。

環境にやさしい暮らしを自分のペースで。塩屋なら始められるかも。

最後に、シオヤコレクションのメンバーの皆さんに、普段取り組んでいる環境にやさしいことを尋ねました。澤井さんは、「塩屋に来たのは、インフラに頼り過ぎない暮らしを実現したいと考えたからで。本来あるものでできることは、それだけでやるように心がけています。例えば洗剤を使わず石鹸で。畑は肥料を使わず枯れ葉や生ごみだけで育てます。あとは、家を10年かけて、古材をたくさん活用しDIYで内装をやり直しました。」とたくさんの実践をされています。楠本さんは、旬の食材、地産地消のものを買っているそう。淸造さんは、昔からごみの分別はきっちりしているとのこと。それぞれのペースで、それぞれがやりやすい形でできることから取り入れてみるといいのかもしれません。

古着をまわしながら、コミュニティが拡がっていく。徒歩圏内の、顔が見える距離感で楽しむ環境にやさしい暮らし。みなさんも、古着のある生活を始めてみませんか?

 

シオヤコレクション Website
https://shioyacollection.com/

シオヤコレクションInstagram
https://www.instagram.com/shioya_collection/

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