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循環型社会

最終更新日:2021年11月17日

インタビュー・文 /北村胡桃

家が傷んできたから引っ越すのではなくて、
ペンキを塗り替えて、修理して、住み続けてみる。
それが環境負荷を減らすことにつながって行くと思います。

合同会社 ものがたり工作所 代表
一級建築士

小畦 雅史 さん

神戸を中心に活動する一級建築士の小畦雅史さん。
住まい・店舗を対象に、新築のみならず、
DIYを取り入れた古民家のリノベーションを数多く手がけています。
これまでの暮らしと、これからの暮らしのものがたりを
楽しく豊かに紡いでいけるようにと、
今年、「合同会社 ものがたり工作所」を設立し、
さらに活動を広げています。

web site(小畦雅史建築設計事務所)
http://koaze-archi.com
Instagram
https://www.instagram.com/masashikoaze

Facebook
https://www.facebook.com/masashi.koaze

 

―小畦さんは、古民家などのリノベーション、DIYを取り入れた家づくりをされていますが、どのような想いで取り組まれているのでしょうか。その中で「環境」について考えることはありますか。

私は古いものが好きなのですが、なぜかと考えてみたら、古いものって、その空間なりモノなりを使ってきた人の姿が見えるんですよね。それをさらに次使う人のお話を含んで使い続けられていく、っていうものを作りたいと考えていて。空間を作っているっていうより、お話を作っている感覚が強いんです。だから、会社の屋号を「ものがたり工作所」と付けました。DIYを沢山取り入れる理由も、ものづくりや空間づくりに人が関わること、作る過程を、人にお話しできたり、自分の中で思い出として残っていたりすることが大事かなと考えているからなんです。
例えば、お友達とDIYをしてお家をリノベーションした方の話では、みんなで塗った壁を見て、よくお友達のことを思い出すらしいんです。そういう気持ちが家に含まれているほうが、家やモノを大切にずっと使い続けられると思うんです。
こうした活動を始めた当初は「環境」という意識はなかったのですが、人の匂いや思いが染み付いたものを大切にすることは、最近言われているようなエコやSDGsの話と、すごくリンクしているなと感じます。

―つくる過程に関わること、ものがたりを作ることで、モノを大切にする気持ちが芽生え、環境にやさしい取り組みにつながるのですね。人の想いやものがたりを大切にするお仕事の姿勢には何かきっかけがあったのでしょうか?

親戚のおじの家の改築で設計をした時に、そこに大きな桜の木があったんです。近所の人が来て、花見をするほど太くて大きな木を、改築のために切ることになってしまって。それをぼくが止められなかった。桜の木は大切だから切らない方がいいってはっきり言えなかったんです。切ってしまった後にすごく後悔して。思い出話を聞いていたのに大変なことをしてしまったぞ、って。

―桜の木の経験が、背景にある想いを大事にする姿勢につながっているのですね。古民家のリノベーションはどんな面白さがありますか。

初めて携わったのは4年前、南あわじ市の古民家を「のびのび日和」という一棟貸しの簡易宿泊所にした時です。リノベーション企業研究会という集まりに参加していたとき、後継者がいないみかん農家さんのお手伝いをすることになって。毎月行くなかで、自分達でも楽しめる場所を作ろうということになり、古民家をリノベーションして拠点を作りました。
古民家って、現代の生活になじむ部屋にするために、ボードやクロス、フローリングを貼って全部を覆い隠しているんです。それをはがすと漆喰の壁や木の梁が現れて、空間全体が自然素材に還っていくんです。
床下からは昔の醤油ビンが出てきたり、昔の万博のパンフレットが大量に出てきたり。古民家は特に歴史の重なりを強く感じます。そこがワクワクするし面白い。

―古民家のリノベーション現場で出た廃材を捨てずにストックしていると伺いました。何に使っているのでしょうか。

あまり明確な目的なく持って帰ります。もったいないな、何かにつかえるなと思って。使い方としては、別の現場で持ち帰った古い建具を組み合わせて壁代わりにしたり、ついたてをテーブルにリメイクしたり。そのまま再利用するのではなく、少し違った用途で使うのが楽しいんですよね。

―小畦さんはDIYを取り入れた家づくりにも取り組まれていますね。DIYを取り入れてお家をつくったお客さんはどのような反応をされていますか。

体験した方は、「こんなこと自分でもできるんや」「家にとても愛着が湧きます」などと話しています。友達に手伝ってもらって作るから、自分の家だけど自分の家じゃないみたいな感覚って言う人は多いです。自分で何でも作り始める人も多いですね。
DIYをしたい人が参加できるワークショップを開催することもあります。来た人がただ手伝うだけじゃなく、楽しく学べる場を作るように心がけています。
参加した人が「楽しかった」という気持ちや学びを持って帰れば、またDIYしてくれるかもしれない。自分で作ってみようとする人の連鎖ができればいいなと思います。

仕事をする上で、神戸の環境はどうですか。

神戸は自分でやりたいと考える人が多い気がします。そんな気風があるんじゃないかな。環境としては気に入っています。人口が多くて、日本の中でも大都市だけど、海も山もあるし、車で20分もいけば畑がある。ほどよい田舎感がいいなと思います。

―今後、神戸で環境にやさしい取り組みを広げていくとき、小畦さんなら何を発信したいですか。

「ペンキを買いに行って、自分で塗ってみてください。」と伝えたいですね。人に頼まないとできないと思い込まず、自分ができることを増やして使い続けることが大事だと思うんです。家が傷んできたから引っ越すのではなくて、ペンキを塗り替えて、修理して、住み続けてみる。それが回りまわって、環境負荷を減らすことにつながって行くと思います。
最新のエコハウスもいいのですが、価格を考えると、誰でも気軽にできるエコじゃない気がして。お金をかけないと環境にやさしくできないのだろうか、という疑問があります。「誰でもできることじゃないと、誰もしないのではないか」と思いますね。だから、すごく分かりやすいところで言うと、まずはペンキを塗ることから始めたらいいんじゃないかなと。

―「ペンキを買いに行く」。それなら私もチャレンジできそうです。小畦さん自身、これからチャレンジしたいことはありますか。

今考えていることが2つあって。1つは、自分でモノをつくる人たちのコミュニティを作ること。ペンキを塗る、フローリングを張り替えるっていうのは、やろうと思えばできるけれど、それを学ぶ場所がないし、情報を得られる場所がないのが現状です。今はYouTube等である程度やり方は分かりますが、自分の家にどう落とし込んだらいいかが結構難しい。そういう情報を交換できるような場所やコミュニティをつくれたらいいなと思います。
もうひとつは、古い家を持っている人が、手放したり、建て替えなければならない時に、家からガラスや建具を引き上げて、思い出の品としてお皿や照明に再生してプレゼントするサービスです。このサービスは、住んでいた本人ではなくて、子ども世代や孫世代からの贈り物として使ってもらうのが理想ですね。

―最後に、小畦さんの環境にやさしいアクションは何ですか?

エアコンの温度設定を高くし始めましたね。この仕事をしてるからかな。自然にふれる機会があるから、環境に意識が向いてきたのかもしれません。

―これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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