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循環型社会

最終更新日:2022年1月18日

インタビュー・文 /北村胡桃 写真/江副真文・好日山荘提供

大切に使う、無駄をなくす、守る。
100年先に美しい自然を残す
好日山荘「エコジツ」への想い。

株式会社 好日山荘 経営企画室

松浦 由香 さん

好日山荘勤務。入社をきっかけに2011年より登山を始める。
全国各地をピークハントしながらご当地の美味しいモノを食べるのが何よりの楽しみ。女性社員で構成されるおとな女子登山部に所属し、メンバーと共に女性ならではの視点で情報発信も行っている。
2020年11月より広報・PRを担当。

web site
https://www.kojitusanso.jp/
エコジツ
https://www.kojitusanso.jp/eco/
Facebook
https://www.facebook.com/kojitusanso
Instagram
https://www.instagram.com/koujitsusansou
Twitter
https://twitter.com/koujitsusansou

好日山荘では、「エコジツ」という環境に優しいプロジェクトを行っています。
登山・アウトドア用品を扱う会社として、どのようなアクションをされているのか伺いました。

―「エコジツ」を始めたきっかけを教えてください。

好日山荘は、2024年で 100周年を迎えます。私たちは自然の恩恵を受けて商売をしていますし、普段から山に登るスタッフも多く、会社として「美しい景色をもっと多くの人に見ていただきたい」という想いがあり2019年より、「エコジツ」の取り組みを始めました。
美しい景色は無限に続く訳ではありません。100年先に、いい景色、自然をどうすれば残していけるのかということを考え、「100年先の山トモへ」というコンセプトを作りました。そして、100年先にも美しい自然を残していくために取り組み、発信していこうということで「エコ」「好日」を組み合わせた「エコジツ」という名前で活動を始めました。

―自然と関わる仕事だからこそ、取り組もうという想いが素敵です。具体的にどのような取り組みなのでしょうか。

「大切に使う」「無駄をなくす」「守る」という大きな3つのカテゴリーに分けて取り組んでいます。


「大切に使う」

良質なダウンって、50年、100年も使える と言われているのをご存じですか?実は、ダウンはエコな素材なんです。そこで、使わなくなったダウンを捨てるのではなく、回収し、洗ってリサイクルダウンとしてまた新たな製品に生まれ変わらせる「グリーンダウンプロジェクト」に賛同し、好日山荘各店舗に回収ボックスを設置しました。設置後、グリーンダウンプロジェクトの方から、「好日山荘で回収される量が他の企業に比べてとても多いんですよ」と褒めてくださったことがありました。弊社のお客様は環境意識が高い方が多いのかもしれない、と、とても嬉しい気持ちになりました。
2021年は、回収したグリーンダウンプロジェクトのダウンを使い、ダウンスリーピンバッグ・メーカーであるナンガ様(滋賀県米原市のダウン製品会社)とコラボしてダウンジャケットを発売することになりました。ひとつアウトドアアイテムとしてお客様のご協力が形になったことに感謝感激です。

―気軽に持っていくことができるのも魅力ですね。登山といえば、ダウンだけでなく、登山用品も、長く使えるイメージがあります。

各店舗に登山用品のメンテナンスの相談をお受けする、「メンテナンスサポートデスク」を設置しています。
登山用品って、値段が高いものも多いので、できるだけ長く大切に使ってもらえるように、ザックや靴、登山道具の修理や手入れのご相談を無料で承っています。パーツの交換など、修理に必要な備品は実費ですが、まずどこに持っていったらいいか分からないということもあると思いますので、気軽にご相談いただければと思います。道具の修理に詳しいスタッフがアドバイスします。

「無駄をなくす」

社内でペットボトルの削減を目指しマイボトル持参率を高めようと、2019年より「マイボトルもっとる運動」を始めました。好日山荘に勤務している社員やアルバイトに対して、ボトルを配布しました。登山・アウトドアでは水分は必須なので実はマイボトルを持ってきている人は元々多かったんです。始めた当初は70%くらいの持参率で、そこから100%を目指そう!と運動を始めると、皆さんすんなりと受け入れてくれました。お気に入りのステッカーを貼ったり、気に入ったデザインや機能のものを取り入れて楽しくやっていこうという空気があり、持参率も徐々に上がって来ています。

「守る」

2009年から、「山まゆの森」という六甲山の森林整備(グリーンベルト事業)の取り組みを続けてきました。阪神大震災で傷んだ山を市民や企業参加型で安全に整備していく目的で六甲の砂防事務所が始めた事業に弊社が賛同したことが始まりです。「山まゆの森」の名前は、植樹したコナラやクヌギに将来ヤママユが育ち、美しい繭(まゆ)を残してくれたら …という想いで名付けられました。
以前は、スタッフが管理をしていたのですが、2016年から、ボランティアツアーとしてお客様を連れて、ハイキングとセットで一緒に楽しみながら管理をしています。山岳ガイドが同行し、六甲山の歴史や自然・植物の知識などもお伝えし、登山の魅力発信や次世代を担う子供たちへの自然体験といった啓発的な側面も担っています。毎年春頃に募集をするのですがすごく人気です。私自身も、この取り組みに参加しています。2019年に植樹した木も、最初は間違えて刈りそうになるくらい小さかったのが、今ははっきり分かるくらいに大きくなってきて。植林した木がどんどん大きくなっているのを見るとすごく嬉しいです。
活動をしていて実感するのは、「自然」と「野生」は別物なのではないかという事。自然もある程度人の手をいれないと荒れてしまいます。自然災害で道が崩れてしまったり、人が入らなくなり道が消えてしまう、なんて事も。国有林では林野庁が整備している場所もありますが、山域によっては山小屋の方や地元のボランティアさんが一生懸命整備して下さっているところも多くあります。六甲山を整備されている方にお話を聞くと、「もっとお客さんに来てもらいたい、安全に楽しんでもらいたい」と熱く語ってくださいます。本当に山を愛し、守っていきたい、という気持ちが伝わって来ますし、私たちも少しでもお手伝いできないかと思います。

―まずは自分たちができるところから、という考えでアクションされているのですね。活動をする中で、課題に感じていることはありますか。

ここ 2年、コロナ禍で、お客様と一緒になっての活動がなかなかできなかったので苦労しました。2021年 10 月の緊急事態宣言明けから、お客様も徐々に山に戻ってきている状況があります。遠方というより、近場の日帰りで行ける山でまず様子を見て、楽しまれている方が多いようです。好日山荘主催のツアーも、関東地域では満席になることもあって、需要が戻ってきていると感じます。今後も感染対策をしっかり行いながら進めていきたいと思います。
また、もっとエコジツの取り組みを周知していきたいです。例えば、社員の名刺にはエコジツのロゴマークを印刷して、名刺を交換するときにはエコジツのプロジェクトについて説明するようにしています。お客様に知っていただく機会はまだまだ少ないので、 SNSなどを通して活動を広めていきたいと考えています。

―好日山荘さんは、神戸が創業の地ということですが、山まゆの森を始め、神戸を拠点に社会貢献活動をされている印象を受けます。神戸へどのような想いがありますか。

100年続くような企業は、本当に地元の方に支えられ、ご愛好いただいているからこそなので、感謝の気持ちを地元に還元したいという想いが一番です。
2021年2月には神戸市と2社での連携、同年 10 月には、神戸電鉄と神戸市と 3社の事業連携をさせていただきました。この連携は、好日山荘だけではできないことを地方自治体、地元企業の方と連携することで、より大きな神戸市への恩返しをできたらという想いで進めています。
現在神戸電鉄さんと、裏六甲の魅力発信に取り組んでいます。登山整備やイベントを通して、裏六甲の魅力を再発見していただき、地域にお住まいの方は勿論、全国のアウトドア好きに楽しんでいただけるような場をつくっていきたいと考えています。

―神戸には地元に愛されるシンボル的な六甲山がありますね。「登山」という視点でみると、神戸はどのような魅力がありますか?

「近代登山発祥の地」と称される六甲山は、開港都市として栄えた神戸に隣接しており、海と山と街が近い稀有な場所です。その為、駅からすぐに山に行けるというアプローチのよさが魅力ですよね。 車をお持ちでない方でも気軽に行けるというのは強みです。
もうひとつは、コースの豊富さ。六甲山は 200~300のルートがあると言われています。時間や自分の体力に合わせて、老若男女楽しめます。登山自体、競わずにそれぞれがそれぞれのペースで楽しむことができるという点で特殊なスポーツといえます。健康増進、コロナ禍でのリフレッシュにも最適です。

―お話を伺っていると、六甲山へ出かけたくなってきました。好日山荘さんとして、これから取り組みたいことを教えてください。

お客様自身、環境にやさしいアクションをしたいけれど、機会がなかなかないのが現状だと思います。会社として、そういった場を提供していきたいです。例えば、ごみ拾いをしながら登山をするクリーンハイク。スタッフから「クリーンハイクをやりたい」という声が出ています。まだまだこれからですが、こうしたスタッフの声を拾いながら、全国各地の店舗で取り組みができたらと考えています。最近では、ハイキング×山のごみ拾い×テントサウナ、という異業種をコラボしたイベントを開催し、募集がすぐに埋まる好評ぶりでした。こうしたイベントも続けていきたいですね。
あとは、スタッフ個人の活動も発信していきたいという想いがあって。全国にいるスタッフが、個人個人でエコな取組をやっています。大きなアクションは難しいかもしれませんが、小さなことを永く実践していくことも大切にしたいと思います。

―最後に、松浦さんも山に登るそうですが、山でのワザを日常に取り入れていることはありますか?

登山中、ごみをできるだけコンパクトにする習慣があるのですが、日常生活でもなるべくごみが出ないよう過剰なラッピングを避けたり、野菜や果物も皮つきで食べられるものは出来るだけ食べるようにしています(笑)。あとはモノを買う場合、なるべく複数の使い道ができる、長く使える、といった基準で選ぶようにしています。

―これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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