GO GREEN KOBE 環境にやさしい神戸をつくる。

Articles

循環型社会

最終更新日:2022年10月29日

インタビュー・文 /北村胡桃 写真/江副真文

人と自然が近づく場所。
緑が豊かで気持ちのよい地域をつくる後押しをしたいと思いました。

NATURE STUDIO

村上 豪英 さん(株式会社村上工務店)
上戸 了子 さん(有限会社リバーワークス)
稲葉 滉星 さん(有限会社リバーワークス)

2022年7月、廃校となった湊山小学校の跡地を活用したコミュニティ型複合施設「NATURE STUDIO(ネイチャースタジオ)」がオープン。「自然と暮らしをつくる」をコンセプトに、テナントやイベントを通して、自然を身近に感じ、楽しむ体験ができます。

web site
NATURE STUDIO
https://naturestudio.jp/

NATURE STUDIO Instagram
https://www.instagram.com/naturestudiokobe/

NATURE STUDIO HERB SHOP Instagram
https://www.instagram.com/herbshop.naturestudio/

―NATURE STUDIOについて教えてください。

村上さん
2015年に閉校した兵庫区の湊山小学校の跡地につくられた、「自然と暮らしをつくる」をコンセプトにした複合施設です。施設内には、水族館、ニジマス釣りのできる池、ビール醸造所、ハーブショップ、フードホール、学童や保育所、就労支援施設などがあります。今後はレストラン、ヘルスケア施設もオープン予定です。子どもから高齢者まで、多様な世代が集う場所になって欲しいと考えています。

稲葉さん
NATURE STUDIOには、大切にしている6つのアクションがあります。「REGENERATE―自然と暮らしを再生するために―」「REUSE―サステナビリティを楽しむ―」「RELEARN―自然と暮らしを学び直す―」「RESPECT―自然の恵みをいただく―」「RETURN―自然の近さを取り戻す―」「RELATE―つながる、育つ、広がる―」です。NATURE STUDIOのテナントやイベントはすべてこのアクションに関連づけられています。

―NATURE STUDIOはどんな経緯で生まれたのでしょうか。

村上さん
神戸市の湊山小学校跡地活用の事業公募に参加し、私たちが事業者に選ばれ、NATURE STUDIOをつくりました。
このエリアは平清盛ゆかりの地であり、実は私自身も子どもの頃に暮らした場所で、「いいところ」というイメージを持っていました。しかし、小学校が閉校するのは、人口減少、少子高齢化が進んでいる証拠です。そこで、地域の魅力を発信し、地域全体のためになるような施設が作れないかと考え、人々が集うコミュニティ型の複合施設を提案しました。

―「自然と暮らしをつくる」というコンセプトにはどんな想いが込められていますか。

村上さん
NATURE STUDIO周辺のエリアは、今後、商業の発展や工場が建つような場所に変化していくのではなく、緑豊かな住み心地の良い住宅地として魅力が増していく場所だと思います。そのエリアの真ん中にあるNATURE STUDIOを、気持ちの良い住宅地の形成を後押しするような施設にしていきたいと考えました。

―入口の壁面のデザインが印象的ですね。

上戸さん
この木組みは神戸市内の建築家が考案した「フレームグリッド」という手法でデザインされています。立方体で組み合わされた構造物のなかに、よく見ると植物が少しずつ芽吹いています。この構造物から有機物がどんどん育っていく様が、地域再生のシンボルになればという想いでつくりました。いずれは壁面緑化するような形で、どんどん緑が生い茂って欲しいですね。

―NATURE STUDIO内で、環境を意識している点はありますか。

村上さん
一番大きな環境負荷削減は、「校舎を残して、再活用した」ことです。実は公募では、校舎を残すことは必須ではありませんでした。ただ、地域の方が愛着を持ち、普段使いしてもらえる場所にするには、長年、愛着を持つ校舎をそのまま使う方が良いと考えました。さらに、校舎には天井が高い体育館など、魅力的な空間がたくさんあります。今あるものを活かしながら何ができるかを考えていくのがとても楽しかったです。
校舎だけではなく「できるだけ使えるものは使いたい」という想いから、随所で再利用をしています。例えば水族館内では、解体した校舎のフローリングやランドセル入れ、教室の椅子などを活用しました。

上戸さん
NATURE STUDIOの庭は、エディブルガーデン(食べられる庭)です。植物の名前が書かれた「グリーンマップ」も用意しています。ここを訪れたお客様に「この庭は、食べられる植物がたくさんあるんですよ。探してみてくださいね」とお声掛けすると、みなさん驚かれて庭の散策を始められます。

稲葉さん
ハーブショップでは、ペットボトルを資源にしたポットや、珍しい植物、全国から集めたこだわりの商品を販売しています。寄せ植えやアロマオイル作りなどのワークショップも開催していますよ。

村上さん
ビールの製造時に出る麦芽かすは、きちんと処理することで肥料になります。施設内で出る麦芽かすを淡路島に持っていき、肥料にしてハーブを育てています。育てたハーブは、ハーブショップで販売しています。

―環境を伝える上で、意識しているポイントはありますか。

稲葉さん
誰もが気軽に楽しみながら自然や環境問題に関わる機会をつくっていきたいと考えています。先日、「火と人の日」という「火」をテーマにしたイベントを開催しました。焚火、テントサウナ、ラム肉など、さまざまな方法を通して「火」とふれあうイベントです。一見すると環境とは無関係に見えますが、NATURE STUDIOが大切にしている6つのアクションのうち「RETURN―自然の近さを取り戻す―」を意識しました。
近年、火を使う場が減り、人と自然の距離が遠くなっているので、火にふれることで、少しでも自然を身近に感じてもらえたらうれしいです。
さらに、イベントだけでなく、目に見えて感じてもらえる仕掛けも必要だと考えています。例えば、敷地内に畑を作って、野菜が育っているところを観察してもらうのもひとつですね。

―校舎を活用した「みなとやま水族館」も話題です。水族館について教えてください。

村上さん
この地域を後押ししたくても、地域利用に頼るだけでは事業の継続は困難です。そこで、コンセプトにマッチした集客機能が必要だと考えました。水族館がある場所は、もともとが図書室や理科室などの特別教室でした。かつて図書室、理科室で子どもたちが学んだように、これからも新しいことを知り、新鮮な感動がある場所にしたいと考え、行き着いたのが「水族館」だったんです。

稲葉さん
みなとやま水族館は「じっくり見てもらう」ことを大切にしています。順路を設けず、いつまでもゆっくりと生きものを観察できる空間にしました。魚だけでなく、水の循環にとても重要な役割をしているサンゴなど、環境に欠かせない植物も展示しています。

―NATURE STUDIOにはどんな日常がありますか。

上戸さん
学童や保育園の子どもたちが遊んでいる姿があります。中には、ハーブショップに「こんにちは」と挨拶をしてくれる子どももいて、スタッフが「おかえりなさい」と返事をします。小学校だった場所なので、子どもたちの笑い声が聞こえてくるのは感慨深いですね。
水族館を訪れたお客さんが、ハーブショップのスタッフから教えてもらって、マップを片手にエディブルガーデンを楽しむ姿も見られます。

稲葉さん
庭に川をつくると、スズメやトンボなどの生きものが来るようになりました。少しずつ環境が変わっていく様子を日々観察するのはとても面白いですね。

―環境に取り組む上で、神戸のポテンシャルを感じますか。

村上さん
神戸は、自然と都市が近い点でポテンシャルが高いですね。私は、山を切り拓いて自然豊かな場所で暮らすより、都市の真ん中で緑を大切にしながら気持ちよく住む方が、自然を守りやすい方法だと思うんです。都市と自然が近くてもちゃんと境界があって、気持ちよく住めるかどうかに関心があります。

―これから挑戦したいことを教えてください。

村上さん
敷地内の緑化はもちろんですが、周辺の空き地などの緑化を応援できるような仕組みをつくりたいです。「エディブルガーデン」から「エディブルタウン」に拡がっていけばと思います。
そして、地域の資源が循環する仕組みもつくりたいですね。ビールの麦芽かすを使った肥料の活用に加え、庭で採れた果樹を施設内の飲食店で利用したり、ニジマスのアラ(内臓など)を肥料にするといった計画も進めています。敷地内だけでなく、地域の方にも肥料を分けるなどして、地域内循環ができたらと思います。

稲葉さん
やりたいことはたくさんあります。6つのアクションそれぞれの言葉の意味を考え、アイデアを膨らませています。最近では、美味しいこだわりの食材を使っている飲食店を紹介するマップづくりをしたいと考えています。

上戸さん
NATURE STUDIOだけでなく、周辺の市民農園を運営されている方など、自然に関わる方々と連携して、このエリアで面白い取り組みを仕掛けていきたいです。

―最後に、普段取り組んでいる環境にやさしいことはありますか。

村上さん
子どもの頃から自然が好きで、夢は自然保護。大学では生態学を学んでいました。だからこそ、地域を緑豊かにすることに関心があるのだと思います。環境問題はエネルギーやごみなど幅広いですが、その中でも私は「自然」が入口です。山に登るし、釣りもよくしますよ。

稲葉さん
移動は自転車中心ですね。

上戸さん
ハーブショップに常駐していると、環境について知る機会が増えました。普段買い物をするときにも少し意識するようになりました。家では、子どもとブドウを育て始めました。植物の成長を子どもと一緒に学んでいます。

-これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

SNS でシェアする

トップへ戻る