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環境教育生物多様性

最終更新日:2021年12月20日

インタビュー・文 /北村胡桃 写真/中川聡子・西谷寛さん提供

自分の娘のために作った童話を絵本にしました。
「海と空の約束」を通して、
海や生きものの危機を感じて欲しいんです。

海と空の約束プロジェクト 代表

西谷 寛 さん

神戸市職員として長年、環境教育に携わり、定年退職後も海や川の環境保全活動を続ける西谷寛さん。国連生物多様性推薦図書に選ばれた自作絵本「海と空の約束」は世界15か国で翻訳され、世界の子どもたちに環境教育の機会を提供しています。

web site
http://umisora.pro/
Facebook
https://www.facebook.com/umisora.project
Instagram(西谷寛)
https://www.instagram.com/happy24tani/

―海と空の約束プロジェクトの活動について教えてください。

自作絵本「海と空の約束」を使った環境教育活動を行っています。「海と空の約束」は、人間の暮らしと自然環境のつながりや様々な生きものが暮らす自然界の自浄作用について、小さな子どもから大人まで、私たちに何ができるかを考えるきっかけになる絵本です。児童館や学校、幼稚園、セミナーなど、さまざまな場所で絵本を使って、海や生き物の危機や環境について考えてもらう機会を作っています。
また、森・川・海・まちを守る活動や再生活動の支援を行っています。保育園や幼稚園の園庭にビオトープを整備したり、海や川などで生き物を観たり触れながら行う環境体験の場を提供しています。明石市の望海浜や大蔵海岸、朝霧川での保全活動も続けています。
世界の子どもたちに絵本を届け、環境教育の機会を提供する取り組みも進めています。「海と空の約束」は友人たちのサポートで15か国語に翻訳されました。翻訳された絵本をJICA(国際協力機構)やOISCA(公益財団法人オイスカ)、NPO、学生団体、企業などと連携し、海外へ届けています。

―子どもから大人まで、世界中に環境教育を展開しているのはすごいですね。環境教育をはじめるきっかけは何ですか。

25年前、神戸市の環境教育を進めている部署の係長になり、地域の環境活動を支援したことがきっかけです。子どもたちと一緒に川や海岸で生き物のことを調べたり、調べた結果を地域や学校で説明したりしました。それがすごく楽しくて。さらに、地域の皆さんに集まってもらうために環境学習の企画を自ら考えるようになると、ますます面白くなりました。支援をする中で、環境教育の魅力や深みを自分なりに感じていたんだと思います。
それからは環境教育にのめり込み、土日でもプライベートでも、部署が変わってからも積極的に手伝いに行っていました。地域から「また手伝ってほしい」と依頼の電話がかかってくるのもうれしかったですね。

インタビューを行ったのは、いきものずかんのメンバーとして学生時代に西谷さんと一緒に活動した筆者 北村胡桃。

―その後、絵本「海と空の約束」を自費出版されます。どんな経緯で作ったのですか。

「海と空の約束」は、1990年に幼いふたりの娘に読み聞かせようと書いた童話です。この童話を聞いて育った次女が高校生の時に一枚の絵を描いたのですが、それを見た時に「海と空の約束」を絵本にすることを思いつきました。2008年にイラストレーターの協力を得て絵本を作りはじめ、2009年に自費出版しました。

 

―毎日活発に活動されていますね。環境活動を通してどんなやりがいを感じますか。

参加者が私の話を熱心に聴いて、目を輝かせて活動してくれた時です。私自身は毎回楽しんで活動しているのですが、伝える相手、関わる人が楽しんでくれたら、「今日はうまくいったな」って思えて、うれしいですね。
どんどんつながりが広がることもやりがいです。知り合った人から依頼があるだけでなく、知り合いが私を紹介してくれて、全くつながりのない地域に呼ばれることもあります。活動が評価され、広がって、また新しい活動につながるのは私の大きな喜びです。

―大学生と活動されることも多いそうですが、どんなきっかけや想いがありますか。

10年前、兵庫県立大学で「環境教育概論」という授業の一コマを担当して私の活動を話したのですが、授業の後、数人の学生が「活動について行って勉強したい」と声をかけてくれました。そこから学生たちと一緒に、大きな紙芝居を制作したり水族館などで海と空の約束を読み聞かせたりと活動を始めました。今も「いきものずかん」という学生団体として活動が続いています。当時活動していた学生が、社会人になってからも連絡をくれることがあって。それはとてもうれしいことだし、活動の醍醐味だと思います。
学生には、主に絵本の読み聞かせや問いかけを担当してもらいます。子どもたちは若い人が来ると、それだけで喜びますね。「お兄ちゃん、お姉ちゃん」って感じで。子どもたちを引き付け、環境について考えてもらうには工夫が必要で、一筋縄ではいきません。でも、学生が一生懸命考えて伝えれば、子どもたちも応えてくれます。
学生には、始めに「好きなようにやってみて」と伝えるのですが、活動後にはお茶を飲みながら反省会。そこでしっかり振り返りをして、アドバイスをするようにしています。
こうやって一緒に活動して、若い学生の中に環境教育が好きな人が増えていくことは、私自身のモチベーションであり喜びですね。

―25年前に環境教育に出会ってから現在まで、精力的に活動を続けられています。活動を続けるために大切なことは何ですか。

日々の活動をSNSやホームページで丁寧に発信しています。とにかく発信し続けることが、世の中に知ってもらい、活動を維持・発展することにつながると思います。
あとは、積極的に挑戦していくこと。JICA(国際協力機構)の方に、海と空の約束の絵本を海外に持って行ってもらっていますが、そうなるまでには絵本を寄付したり、何度もお話に行ったり、粘り強く交渉をした経緯があります。小さな活動は、何もしなければすぐに止まってします。「もう一度連絡してみよう、もう一度お願いしてみよう」という気持ちで臨むことが大事ですね。

―ご自宅で、太陽光発電、雨水利用、壁面緑化、果樹野菜栽培、コンポスト活用など、環境にやさしい暮らしを実践されていますね。

学生時代、研究のために滞在した、鹿児島県の口永良部島(くちのえらぶじま)での経験が原点です。そこで出会った画家が、島の暮らしの大変さと素晴らしさを教えてくれました。火山活動や台風といった自然の脅威の中で暮らす島の人たちの逞しさに圧倒されました。ある時、私が魚をたくさん獲っていたら、その画家に「遊ぶためだけに獲るな。命を無駄にしてはいけない」と怒られました。まさに、生き物との向き合い方、人として生きていくために必要な多くのことを教えてもらったと思います。
島の暮らしを経験し、「環境のことを考えながら暮らす」ということを実感できました。これは都会の生活でも通じるところがあると考え、普段から意識をして生活するようになりましたね。

―最後に、今後の展望をお聞かせください。

今の活動を一歩ずつ、コツコツ積み上げていきたいと思います。

―これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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