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環境活動

最終更新日:2024年7月24日

六甲山の自然環境を守っていくことは住む人の小さな責任。
自分ができることをできる範囲でやることが大事だと思うんです。

Hear the wind sing

代表 加藤伸一さん

 

みなさんは、六甲山や摩耶山に登ったことはありますか?都市部からほど近く、常に山を身近に感じられるのは神戸ならではではないでしょうか。六甲山には70を超える登山ルートが整備されていますが、誰もが安心して楽しむためには登山道の整備が欠かせません。実は、六甲山の美しい環境の維持にはボランティアの皆さんの活動が大きく貢献しています。一体どんな活動を、どのような想いで続けているのでしょうか。今回は、摩耶山の登山ルートの清掃活動に取り組む、加藤伸一さんにお話を伺いました。

 

登山道の清掃活動は、部活のトンボ掛けと同じこと。

梅雨晴となった6月下旬の土曜日。朝9時に集合場所の新神戸駅の改札前に行くと、加藤さんとお友達が笑顔で迎えてくれました。加藤さんの背中には大きなザック。中に何が入っているのか気になって質問すると、「掃除道具と、掃除終わりの山頂でのバーベキューの材料ですよ。」と加藤さん。今回のゴールである摩耶山山頂はバーベキュー施設があり、活動の後は、景色を眺めながら参加者の皆さんでバーベキューをするのが定番なのだとか。

加藤さんが取り組む山の清掃活動は、神戸市の「神戸登山プロジェクト」の一環である「登山道整備事業」に参加する形で取り組んでいます。行政だけではすべての登山道に行き届いた管理を続けることが難しいことから、新たな活動団体を募集しており、そこで加藤さんが手を挙げました。活動内容は、参加団体がそれぞれ担当箇所を決め、定期的な清掃や看板の手入れ、道路の崩れや倒木などの危険箇所を市に報告するなどして、登山道の安全を守っていくというもの。加藤さんの担当箇所は、摩耶山の旧天上寺へ続く参道の階段です。トレイルランナーとして普段から山に登る加藤さんは、参道を通るたび、落ち葉が溜まった階段の状態が気になっていたことからこの場所を選びました。2024年1月から月1回程度、友人や知人に声をかけ清掃活動をスタート。参加者は毎回違っていて、参加者同士の交流も楽しみながら活動を続けています。

加藤さん
テニス部とか野球部って、練習した後、トンボ掛けをしますよね。山の清掃活動も、自分が使った場所をきれいにするという意味では、部活のトンボ掛けと同じだと思っていて。使わせてもらった者の責任として、できる範囲でやってみたいと思い、プロジェクトに手を挙げました。

六甲山に親しみを持ったきっかけは、子どもの頃の家族の思い出。
神戸の日常には山がある。

清掃場所まではゆっくり2時間程度、お話しながら山を登ります。住宅街を抜けて、見えてきたお寺の階段を上がり、登山道へ。すでに標高は高く、神戸のまちなみが一望できます。加藤さんは休日にトレイルランニングや、六甲縦走を24時間で完走する「六甲縦走キャノンボールラン」に毎年参加するなど、六甲山を楽しむ暮らしをしています。道中、山の思い出や神戸の山の魅力をお聞きしました。

加藤さん
神戸生まれ神戸育ちで、子どもの頃は、家のすぐ裏に山があるところに住んでいて。夏の夜になると、家族4人でアイスを片手に持って、山へ夕涼みに行っていました。休日に、父に連れられてカップヌードルと固形燃料を持って山に入り、お湯を沸かしてラーメンを食べた思い出もあります。こうした子どものときの体験が、山に慣れ親しむきっかけになったと思います。
前職で全国転勤の仕事をしていたので、神戸を長く離れていたのですが、久しぶりに神戸に帰ってきたとき、改めて「自然が身近にあっていいまちだな」と思ったんです。ひとつ、神戸らしいなと思う風景があって。土曜日や日曜日に街中の昼から開いている居酒屋で、もう12時過ぎぐらいには飲んでいる人がいて、その脇には大きなザックがあるんです。朝一番に山に登って昼過ぎには下りて、三宮で一杯。神戸だからこそできる楽しみ方ですよね。

やればはまる、階段清掃。自分のできる範囲で続けることが大切。

2時間ほど歩き、旧天上寺の参道に到着。300~400段もあるという長い階段を毎月少しずつ、掃除しています。よく見ると、階段の大部分が落ち葉や土で覆われています。雨の日は滑りやすくとても危険な状態です。そこで加藤さんがザックから取り出したのは、小さなコテのような道具と軍手。掃除方法は、コテを使って、階段に積み重なった落ち葉や土を削り、手で脇に寄せていくという地道な作業です。加藤さんから「お好み焼きの鉄板をきれいにするようなイメージで」とアドバイスをもらい、作業開始。会話することを忘れるほど集中し、皆でもくもくと作業しました。長年積み重なってきた土は予想以上に固く、剥がす作業は重労働です。必死に作業していると、通りかかりの登山客の皆さんが次々に「ありがとう」「ご苦労様です」と声をかけてくれました。「『ありがとう』と言ってくれることに、『ありがとう』という気持ちになる」と加藤さん。掃除をして感謝をされると、心もきれいになっていくような気がします。
あっという間に1時間。4人で20段ほどの作業が終わりました。自然の中なので、空気が美味しく、とても清々しい気持ちです。最後の仕上げに、ブロワーで残った土を飛ばします。土に覆われて見えていなかったきれいな石段がみるみるうちに現れました。参加していた加藤さんのお友達は「いつまでもやっていたい」とはまった様子。これまでの活動でも、参加者から「気持ちいい」「楽しかった」「子どもも連れてきたい」「まだまだやりたい」といった声があったのだそう。しかし、楽しいという気持ちと同時に、自然相手で終わりのない作業であるという現実も突き付けられます。

加藤さん
登山道をこうやって少しずつ綺麗にして、子どもも連れて行けるような安全な環境にしていくのは神戸に住んでいる人の小さな責任かなと思います。僕には「ハチドリのひとしずく」という好きな童話があって。森が火事になって動物たちが逃げ出すのですが、1羽のハチドリがくちばしに水を含ませて火元に運ぶことを繰り返している。周りから「そんなことをしても火は消えない」と言われるのですが、ハチドリは「僕は僕のできることを今やっているんだ」と答えるんです。今できることを自分のできる範囲でやるのは、素敵なことだと思って。この清掃活動は一度綺麗にしても、雨や風でまた落ち葉が溜まっていくので、きりがない大変な作業です。きれいに保つならもっと頻度を上げた方がいいかもしれないけれど、無理をせずに毎月1回と決めて、できる範囲で続けていこうと思っています。

環境にやさしいアクションのコツは、最初の一歩を限りなく低く設定すること。

清掃活動を終え、摩耶山山頂へ向かう途中、加藤さんが環境にやさしいアクションを始めるためのヒントを、前職で勤めていたフィットネスクラブの経験に例えて教えてくれました。

加藤さん
みなさん、運動の効果は知っていますよね。でも、毎日腕立て伏せ10回やろうと決めてもなかなかできない。そこで目標を最低限にして「1回だけはやろう」って決めてみるんです。すると人間って面白くて、1回すれば、2、3回はやってしまうんですよ。だから、物事を始める入口が何かをよく考えてみるといいと思いますよ。「マラソンの練習苦手だけど、走るかどうかは別にしてとりあえず靴を履いて外に出よう」といったように。今回で言えば、「摩耶山にバーベキューしにいくついでに、ちょっとだけ登山道の掃除をしてみよう」と考えてみる。最初の一歩を低くして、あまり高い目標を決めすぎないで緩く始めることがコツです。

登山×○○、大人の秘密基地。
山をもっと楽しめる企画や拠点を作りたい。

摩耶山山頂に到着。とても充実した土曜日の朝となりました。お昼はお待ちかねのバーベキューです。参加者同士の交流もこの活動の魅力のひとつ。最後に、これから六甲山をフィールドに加藤さんがやってみたいことをお聞きしました。

加藤さん
これからもっといろんな人たちとアイデア出しながら、山登りと何かを掛け合わせた企画もできたらいいなと思っていて。あとは、将来的にハイカーやトレイルランナーの人たちが集まれる場所を作りたいですね。冷蔵庫にビールを冷やしてセルフサービスで飲めたり、長いソファでグダグダしたり。ちょいワルオヤジが集まりそうな、秘密基地のようなスペースがあったら楽しいだろうなと思っています。

活動に参加して、今ある美しい自然環境は当たり前ではなく、誰かの行動によって守られていることに気づきました。六甲山を身近に感じ、自然と共に暮らす神戸の魅力をこれからも残していくためには、ひとりひとりが責任を持って考えていくことが大切です。みなさんも、まずは一歩、山に登ってみることから始めてみませんか?

 

神戸登山プロジェクト  TREK KOBE
https://www.city.kobe.lg.jp/a64051/shise/kekaku/kezaikankokyoku/rokkomaya/tozanproject.html

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