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生物多様性

最終更新日:2023年7月4日

インタビュー・文 /北村胡桃 写真/江副真文・兵庫県立御影高等学校提供

六甲山を観察し続け、見つけたキノコは600種以上!
多くの人にキノコの多様でおもしろい世界を伝えたいと思いました

兵庫県立御影高等学校 環境科学部
(通称キノコ部)

顧問 秋山衛先生 大西伸弥先生
3年生部長 柳口葵さん
1年生部員 奥下ちなみさん 児島舞さん

2008年より、「キノコの多様性を伝えること」を目的に、六甲山のキノコの観察とキノコの展示会を行う部活動。昨年、『環境大臣表彰』と『兵庫県知事表彰』を受賞し、全国的に注目されている。

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―「キノコ」をテーマに活動しているということですが、活動内容を教えてください。

大西先生
主な活動は六甲山のキノコの観察と展示会の企画です。メインの観察会は月に1回、六甲山の再度公園で兵庫きのこ研究会の方々と一緒に行います。その他に部独自の観察会や、部員が先生役になり子どもを対象にした観察会なども行ってきました。2008年から15年間で採集したキノコはおよそ600種類、1000点以上。標本にしラベルを付けて大切に保管しています。観察を重ねるうちに見分けるスキルが身に付いて、3年生になる頃には見た目だけで何の仲間か分かるようになるんですよ。採集したキノコは展示会で披露します。

―六甲山に600種類ものキノコがあるとは、驚きました。展示会では具体的にどんな企画をしているのですか。

大西先生
キノコの展示会は毎年、神戸市立森林植物園、御影クラッセ、兵庫県立人と自然の博物館の3か所で開催しています。それに加えて展示の依頼を受けることもあります。毎回学生主体で訪れた人に興味を持ってもらえるよう工夫を凝らした企画を考えています。例えば、季節、毒、香り、薬に使うもの、動物の名前など、テーマを決めてキノコをセレクトします。最近では、人類とキノコの歴史をまとめた年表や生態系の中でのキノコの役割を示した展示を行いました。展示会は毎回盛況で、子どもから高齢者までさまざまな世代の方が来られます。毎年楽しみにしてくださる方もいますよ。

―観察に展示会と精力的に活動されていますが、どのような目的があるのでしょうか。

大西先生
キノコが「生物多様性を支える存在」であると多くの人に伝えたいと考えています。例えば、自然界におけるキノコの重要な役割に、落ち葉や枯れ木などを分解し土に返す働きがあります。樹木に含まれる「リグニン」という物質を効果的に分解できるのはキノコのみといわれていて、キノコがなければ植物が腐らず落ち葉や枯れ木だらけになってしまいます。つまり、キノコによって循環が生まれ、多様な生物が生息できているのです。また、種類ごとに好みの環境があるので、キノコを見れば周辺の環境を予測できます。種類が多ければ多いほど、生物多様性が豊かな証拠だといえます。

―長年の活動が評価され、昨年、環境大臣表彰と兵庫県知事表彰を受賞しました。15年間六甲山のキノコを観察して、分かったことはありますか。

大西先生
キノコの定点観察を行う団体は全国的に珍しく、15年間積み上げてきたデータはとても貴重です。このデータから六甲山の環境の変化を知ることができます。例えば、数年前から数が増えてきた「カエンタケ」。枯れた木に生えるキノコで、六甲山で問題になっている「ナラ枯れ」という現象と関係して増えているのではないかと分析しています。他にも、データを活かして、再度公園内のキノコの数の予測や、温度や降水量がキノコに与える影響を調べる研究なども進めてきました。

—キノコをテーマにした活動は、どのような経緯で始まったのでしょうか。

大西先生
御影高校の恒例行事である「耐寒登山」で、当時の学生達が登山中にキノコを見つけ、「六甲山にはどれくらいキノコが生えているのだろう。」と疑問を持ったことがきっかけです。それから、総合学習の時間にキノコの調査を始めました。2008年に、もともとあった環境科学部の中に生物班を作り、部活動として引き継がれました。2年前からは、環境科学部全体でキノコに関する活動しています。

―当初から取り組む活動の他に、新たに挑戦していることはありますか。

大西先生
今年は切り口を変えて、キノコの栽培方法の研究を始めました。放置竹林や間伐材を利用して栽培できないかと考えています。他にも、「海と山のつながり」をテーマに、県立尼崎小田高校と連携して魚やマイクロプラスチックの調査も行っています。部員には、活動を通してできるだけたくさんの経験をしてほしいと思っています。

―部員の皆さんは、どうして環境科学部に入部したのですか。

柳口さん
アットホームな雰囲気に惹かれました。あと、毎年夏に豊岡市で、ウニの人工授精を体験する合宿を行うのですが、花火やスイカ割りもすると聞いて楽しそうだなと思って。

奥下さん
中学生のとき、コロナ禍で中止になったトライやるウィークの代わりに、SDGsについて調べ、学習をしたことがきっかけで、環境に興味を持ち始めました。高校でも環境の勉強がしたいと思って入部しました。

児島さん
中学校の理科の先生の影響で生物に興味を持ち、入部しました。

大西先生
中学のとき美術部に所属し、キノコの見た目がアートの視点でおもしろいと感じて入部した人もいますよ。このように、入部理由はキノコ好きとは限らずさまざまです。

―3年間キノコと接した部員の皆さんは、どのような進路を選ぶのでしょうか。

大西先生
3年間でキノコがだんだんと好きになり、将来にまで影響を与えることもあります。例えば、高校卒業後も活動を続けたいと兵庫きのこ研究会に入会した人や、森林とキノコを研究し大学の先生になった人、生物系の大学に進学した人。キノコ部が受けたテレビ取材をきっかけに、メディア関係の仕事に就いた人もいます。

―部員の皆さんは、好きなキノコはありますか。

柳口さん
ヤマブシタケです。山伏が身に着けている飾りに似ていることから名付けられました。白くて、キノコらしくない感じが好きで、木から生えている姿が幻想的できれいです。

奥下さん
キタマゴタケの幼菌です。かさの部分が本当の卵の黄身みたいな色をしていて。つぼの部分は白くて、厚みまで卵の殻にそっくりです。見た目が本当にキュートなんです。

児島さん
私はカエンタケが好きです。毒のあるとても危険なキノコなのですが、私の好きなマンガに登場したので興味を持ちました。

大西先生
高校の文化祭では、部員それぞれが好きなキノコを調べて展示物を作ります。クイズやオリジナルの缶バッチも作って、来場者に楽しんでもらいます。ちなみに私は、ドクツルタケが好きです。

―キノコの魅力はどんなどころにあると思いますか。

大西先生
部員の中でも、見た目が好きな人や展示の企画が好きな人、子どもとの観察会が好きな人、研究が好きな人など、面白いと感じる部分は違っています。キノコの魅力は、そのものの多様さだけでなく、アートや環境、子どもといったいろんな活動分野に拡がっていくところだと思います。

―最後に、部員の皆さんはどんな環境問題に関心がありますか。

柳口さん
海洋プラスチック問題です。もっと知りたいので、大学は化学系や材料系の学部を受験したいと考えています。

奥下さん
地球温暖化です。5月に夏日が発生するなど、昔と比べて状況が明らかに変わってきていると感じています。将来的に自分にも関係することなので興味があります。

児島さん
異常気象です。最近、異常気象が普通の気象になってきているのはおかしいと感じていて。自分でも何かできないかなと考えています。

-これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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