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生物多様性

最終更新日:2023年9月22日

合言葉は「グッバイイエロー!」
特定外来生物オオキンケイギクを、
染色を通して楽しく知ってもらいたい。

神戸松蔭女子学院大学 人間科学部 都市生活学科
教授 花田美和子さん

 

5月から7月頃、道路の脇や河川敷に一面に咲く鮮やかな黄色い花を見かけたことはありませんか。コスモスに似たその花の名前は、「オオキンケイギク」。北アメリカ産の外来種で、繁殖力が強いことから外来生物法に基づき特定外来生物に指定されています。今回は、大学と神戸市が連携し、新しいアイデアでオオキンケイギクの課題解決を目指す取り組みをご紹介します。

オオキンケイギクの存在を周知するため「染色」に注目。

オオキンケイギクは明治時代に観賞用と緑化用として国内へ導入された植物です。きれいな見た目と根をしっかりと張る特徴から、法面を緑化する際の植物として全国的に利用されてきました。種と根によって増え繁殖力がとても強いため、周辺の河川敷や公園へと一気に拡がっていきました。日本古来の植物の生育場所を奪ってしまう恐れがあることから、2006年に環境省が「特定外来生物」に指定し、栽培や生きたままの移動を禁止しました。神戸市では、生育地の拡大を防ぐため、刈り取り作業のほか、市民に向けた啓発活動に取り組んできました。そして昨年、より多くの方にオオキンケイギクを知ってもらいたいと目を付けたのが花びらによる「染色」です。「染色」のためにオオキンケイギクの花やつぼみを摘み取ることで種ができなくなり、増えるのを防ぐことができます。

白いハンカチがあっという間に美しい黄色へ。
研究の結果、染色に最適な植物だと明らかに。

染色の研究に携わったのが、被服学と色彩学が専門の神戸松蔭女子学院大学の花田美和子教授と水沼千枝助手、ゼミ生の皆さんです。昨年(令和4年)5月に神戸市から相談を受け、神戸市内で摘み取ったオオキンケイギクの花を使って、染色の方法研究をはじめました。

染色は沸騰したお湯に、オオキンケイギクの花をたっぷり入れたネットを沈め20分ほど煮出します。するとみるみるうちに、水がオレンジ色に変わり、ハーブティのようないい香りが漂ってきます。次に、水で濡らし絞った綿のハンカチやTシャツをゆっくりと鍋に入れます。かき混ぜながら20分程加熱した後引き上げると、花の色より少しオレンジがかった黄色に染まります。ムラなく染めるには、温度をしっかり上げ、焦らず時間をかけることがポイントです。色の違いは、液体の濃度の他に、金属との反応により現れます。実験の結果、アルミを含むミョウバンを入れた水溶液に染色後の布を浸すと、濃いオレンジ色に変化することが分かりました。自然染色は、条件を同じにしても、毎回少しずつ色が違うのが面白いところ。さらに輪ゴムで布を縛れば絞り染めができ、世界に一つだけのオリジナルの製品が作れます。花田先生は、「染まりにくい素材である綿でもきれいに色が出るので、染色に向いている。」と評価しています。

家庭で染色をする場合のポイントは、摘み取りの際の「部分」と「時期」と「場所」。

染色は家庭でも簡単にできますが、オオキンケイギクの花を集めるには注意点が3つあります。1つ目は摘み取る部分。特定外来生物は生きたまま移動することは禁止されています。花やつぼみを摘み取るのは問題ありませんが、根から抜き取る場合、根が拡散しないように袋に入れて密閉し、燃えるごみとして処分しなければなりません。2つ目は時期。繁殖を抑えるために、種が出来る前の花が咲いている時期に摘み取ります。3つ目は場所。道路脇の法面や中央分離帯などの危険な場所では、決して摘み取り作業を行わないようにしてください。これら3つの注意点を守り、オオキンケイギクの特性を知った上で、染色用の花を集めることが大切です。

市民向けの染色体験イベントを開催。多世代が楽しみながら学んだ。

今年(令和5年)6月4日には、市民の皆さんに染色を通してオオキンケイギクを知ってもらおうと、北区山田町でイベントが開催されました。神戸松蔭女子学院大学 花田ゼミ、神戸市、山田校下里づくり協議会、デザイナーなどが連携し企画しました。テーマカラーはもちろん黄色で、合言葉は「グッバイイエロー」。子どもから大人まで幅広い年齢層の方が約20人集まり、花の摘み取りと、各自が持参したTシャツやタオルなどの染色を体験しました。スタッフとして参加したゼミ生、田中美紗希さん(3回生)は「皆さん興味津々に体験してくれました。小さなお子さんも喜んでいました。」と振り返ります。

継続して取り組み、オオキンケイギクの減少に繋げたい。

花田先生のゼミでは、専門性を活かして、神戸市の農産物のPR方法や活用法を考える活動をしています。染色のほか、トマトのヘタやかぼちゃの種を使ったアクセサリー制作や、地元の花を使った空間コーディネートなどにも取り組んでいます。ゼミ生の皆さんは、今回のプロジェクトを通してどのようなことを感じたのでしょうか。

田中美紗希さん(3回生)
「染色を体験する機会は普段あまりないと思うので、多くの人に経験してほしいです。」

銭谷叶果さん(3回生)
「染色の技術は、オオキンケイギク以外の外来生物にも活かしていけるのではと思います。」

奥川壽久里さん(3回生)
「イベントによって、地域の人たちの交流ができていました。プロジェクトを通して、コミュニケーションの輪が拡がっていけばいいと思います。」

最後に、花田先生に今後の展望をお聞きしました。
「来年も引き続き神戸市と連携し研究を進め、多くの方にオオキンケイギクを知って、楽しんでもらいたいです。長く続けて、オオキンケイギクの減少に繋がればと思います。」。

■オオキンケイギク対策へご協力頂ける皆さまへ
活動団体で、オオキンケイギクの抜き取りや刈り取りを実施される場合は、
事前に神戸市環境局自然環境課(078-595-6216)に抜き取り方法、刈り取りの時期、処分方法等についてご相談ください。

神戸市環境局ホームページ 特定外来生物「オオキンケイギク」

Web site
https://www.city.kobe.lg.jp/a66324/kurashi/recycle/biodiversity/ookinkeigiku.html

神戸松蔭女子学院大学 花田ゼミ

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