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環境保全脱炭素

最終更新日:2022年12月17日

竹林整備はおいしく楽しく。
脱炭素にもつながる竹の大きな可能性。
「淡河バンブープロジェクト」

淡河バンブープロジェクト 代表 武野辰雄さん

 

みなさんは「竹」と聞いてどんなイメージを持ちますか?タケノコや昔話、流しそうめんなど...。もしくは、近年よく話題になっている放棄竹林を思い浮かべる方もいるかもしれません。実は今、竹は丈夫で成長スピードが速く、プラスチックの代替や肥料、食料などさまざまな用途に活用できる持続可能で万能な資源として再注目されています。今回はそんな「竹」をテーマに神戸市北区淡河町で活動する淡河バンブープロジェクト の活動について、代表の武野辰雄さんにお話しを伺いました。

「おいしく楽しく」が合言葉。

11月26日、神戸市北区淡河町にある淡河宿本陣跡で、淡河バンブープロジェクトの活動体験プログラムが行われました。参加者は、神戸市内に暮らす留学生の皆さん。まず最初に、淡河バンブープロジェクト 代表 武野さんより説明がありました。

武野さん

「全国で放棄竹林の問題が深刻になっています。私たちは2019年から、『おいしく楽しく』を合言葉に竹林整備の活動をしています。メンマや竹細工、肥料など、さまざまな竹の活用方法に挑戦しています。今日は皆さんに、竹細工と竹林整備の活動を体験していただきます。」

その後竹細工の活動の紹介です。竹細工を長年行い匠の技を持つ松田さんが淡河バンブープロジェクトメンバーに作り方を教えています。竹細工の技術を多くの人が身に付け、次世代に継承することを目的にした活動です。松田さんが竹細工づくりを披露すると可憐な手さばきで竹ひごが編まれていく様子に留学生の皆さんの目は釘付け。数本の竹ひごがあっという間に編み込まれ、コースターが完成しました。完成した瞬間、拍手と歓声が上がり、松田さんは少し照れ笑い。そのお隣では、淡河バンブープロジェクトメンバーの皆さんが和気あいあいとおしゃべりしながら、クリスマス用のオーナメントを作っています。メンバーの一人が「松田先生、これはどうやったらいいですか?」と聞くと、松田さんはすぐに駆け付け、的確にアドバイス。皆さんとても楽しそうに活動していて、仲間に入りたくなってしまいます。普段どのように活動しているのでしょうか。

武野さん

「数名で始めた活動ですが、現在メンバーは40名程になりました。地元の方だけでなく、三宮などの街中から参加している方もいます。月2回程度、こうやってみんなで作業しながら、活動のアイデアを出し合っています。イベントに、竹細工の販売やワークショップで出店することもあります。来たいときに参加する、サークルのような緩さを大事にしています。」

美味しいお米の秘訣は竹肥料

次に、米農家の北野さんが竹をチップにする実演を始めました。「チッパー」と呼ばれる大きな機械に葉付きの竹をそのまま挿入します。すると大きな音を立て、一気に竹が粉々に。柔らかい竹チップができました。留学生も体験しその迫力に圧倒されたようです。竹チップは乾燥させ、牛糞や米ぬかとまぜて肥料にします。お米の品評会や県のコンクールで入賞常連の北野さんは、竹肥料を使ってお米づくりをしています。竹肥料はお米との相性が良く、化学肥料を使わないので収穫量は減りますが、とても美味しいお米ができるそうです。課題は化学肥料に比べて竹肥料はお金がかかること。ビジネスとして軌道に乗せていくためには工夫が必要ですが、肥料は竹の活かし方として可能性があると感じているそうです。

竹林整備は重労働。継続の先にある大きな変化

次に竹林に移動し、竹林整備の体験会が行われました。斜面地に太く真っ直ぐ伸びる竹を、切る役と支える役に分かれ数人がかりで慎重に切っていきます。斜面地での作業は足下がとても不安定。竹林整備がいかに大変であるかを実感します。高く伸びた竹はそのまま車で運ぶことができないので短くカットします。さらに運びやすくするために、葉や枝もひとつひとつ切り落としていきます。留学生の皆さんは自発的に役割分担をし始め、竹の切り出しから枝の切り落としまでスムーズに作業を進めていきました。参加者の皆さんは、作業をしながら自己紹介をしたり、お話をしたり、竹林整備を通して自然と仲が深まった様子でした。重労働である竹林整備ですが、活動を続ける中で目に見える変化が現れてきたと武野さんはいいます。

武野さん

「活動を始めた当初、この竹林は昼間でも真っ暗で、入るのが怖いくらいの場所でした。竹林整備をコツコツ続けてきた結果、今では竹林の中でも空が見え、先が見通せるほど明るくなりました。」

竹細工で広がる交流の輪

お昼ごはんの後は、改めて竹細工の紹介がありました。竹細工で作られた、カゴ、コースター、コーヒーフィルター、飾りなどに、留学生たちも興味津々。竹はとても丈夫で腐らず長持ちし、変化していく色合いを楽しむことができます。淡河バンブープロジェクトメンバーの皆さんに話を伺うと、一番難しい作業は「竹ひごづくり」。竹を少しずつ薄くする技術は、コツをつかむまで時間がかかります。竹細工の名人、松田さんが「練習を重ねれば、誰でも上手くなりますよ。」と手品のように、手際よく竹ひごづくりの工程を見せてくれました。

武野さん

「私たちは毎年、『1.17のつどい』で使われる竹燈篭を作っています。私たちが切った竹に、地元の幼稚園、保育園、小学校、中学校の皆さんが文字を書いてくれています。」

淡河バンブープロジェクトが描く脱炭素の未来

活動の目的と脱炭素につながるポイントについて武野さんに伺いました。

武野さん

「放棄竹林の問題は深刻です。竹林は成長スピードがとても速く生命力が強いので、放棄していると田んぼや畑を簡単に侵食してしまいます。ここ10年~20年で地域の景色が大きく変わってしまいました。耕せる土地が少なくなったり、竹林が害獣の住処になったり、人間の暮らしに支障が出始めています。放棄竹林の整備によって土地を守り、適切に動物と共存できる環境を作る必要があります。竹林整備を進めると同時に、伐採した竹は廃棄してしまうのではなく、資源として有効に活用することで脱炭素につながると考えています。ひとつはプラスチックの代替品としての活用です。お箸や物干し竿など、当たり前に私たちが使っている身近なものひとつでも、プラスチック製から竹や木に変えることで脱炭素に繋がります。ふたつめは、竹で作る肥料。肥料を地元で作ることができれば、海外から肥料を輸送するエネルギーを削減できます。それはメンマも同様です。現在市場に出ているメンマはほとんどが輸入品ですが、今後製造を進めて国産メンマが浸透していけば、輸送のエネルギーを減らすことができます。プラスチックの製品や化学肥料を使った方が、私たちにとっては楽ですよね。ただ、地球に負荷がかかってきていることが明らかになった今、考えを改めて軌道修正していかなければなりません。今の生活の質を維持しつつ地球環境を維持できるような方法を、私たちの活動でも模索していきたいです。」

竹の文化を次世代へ

淡河バンブープロジェクトの活動は、「竹文化を次世代へ継承すること」も大きな目的です。子どもたちに、竹を身近に感じてもらえるような活動を進めています。

武野さん

「1.17のつどいの竹燈篭に地元の子供が文字を書く取り組みはそのひとつ。イベントでは、子どもが楽しめる風車作りなどのワークショップを企画しています。今後は学校の地域学習の時間に、竹を取り入れてもらえないかと考えています。」

脱炭素の未来に向けて、はじめの一歩

プラスチック製品が身の回りに溢れている今、私たちの暮らしへ竹をどのように取り入れていけばよいのでしょうか。

武野さん

「家庭菜園で使う支柱をプラスチック製から竹に変えてみるのはどうでしょうか。あとは、環境をテーマにしたイベントに参加して、竹に限らず、環境にやさしいものに触れてみることが大切だと思います。私たちもイベントに積極的に参加し、竹細工を販売する中で『竹ファン』を増やしていきたいです。」

神戸市民にとって身近に多く存在する竹は、活用次第で私たちの暮らしを豊かにし、環境問題解決へのアクションに繋がっていきます。淡河バンブープロジェクトのみなさんのこれからの活躍がとても楽しみです。

淡河バンブープロジェクト

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この取り組みは、神戸市が実施しているKOBEゼロカーボン支援補助金制度を活用しています。

【KOBEゼロカーボン支援補助金制度】
2050年二酸化炭素排出実質ゼロの実現に向け、神戸の豊かな自然や環境を活かし、自由な発想による先進的で創造性に富んだ、地域貢献につながる取組みにチャレンジする市民、団体、法人などを積極的に支援する神戸市の補助金制度です。
https://www.city.kobe.lg.jp/a36643/zero_carbon_aid.html

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