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循環型社会地産地消

最終更新日:2023年7月4日

インタビュー・文 /尾上満里奈 写真/江副真文・ヤマダストアー株式会社提供

持続可能な社会をつくるには、それぞれの役割分担が必要。
今のヤマダストアーだからこそできることを続けていきたい

ヤマダストアー株式会社

須磨離宮公園前店
商品部 地場チーフバイヤー

中川真理子さん

兵庫県南西部を中心に、持続可能な最高品質の自然食品・オーガニック製品の販売を目指している「ヤマダストアー」。神戸で初めて須磨離宮公園前店が2021年11月にオープン。地域に根ざしたスーパーマーケットとして、地元の加工品や生鮮食品を中心に販売している。自社に代わり環境保全活動を行う団体へは寄付というかたちで貢献したり、深刻な環境問題と密接に関係している家畜生産についても、放牧中心の牧畜農家を応援するなど、「今のヤマダストアーができること」を通じて、地球環境の保全に取り組んでいる。2024年春には9店舗目となる「六甲アイランド店」をオープン予定。

web site
https://yamada-store.com/index.php

Instagram
https://www.instagram.com/yamadastore/

―兵庫県南西部を中心に地域ならではの自然食品・オーガニック製品の販売を目指されているヤマダストアー。他のスーパーマーケットとの大きな違いは何ですか?

他とはできるかぎり違う、持続可能かつ地域ならではの商品を並べていることです。地域にはさまざまなスーパーマーケットがありますが、それぞれの規模や得意とする分野によって社会に担う役割は異なります。そのなかで、「地域密着型のヤマダストアーが、この企業規模だからこそお客様に提供できる価値は何か」を考えて、いち早く“地場”に目を向けてきました。私たちが扱っているのは食品なので、商品については、まずは「おいしい」「安全安心」が第一です。品質にはとことんこだわりを持ったうえで、生産者様の想いや人柄、何よりもヤマダストアーのお客様が喜んでいただける商品かどうかを常に吟味しています。その甲斐あって、ありがたいことにここでしか買えないもの、品質を評価して「ヤマダストアーが好きだから」と買いに来てくださるお客様が多いです。最近はお客様からのご要望が増えてきたこともあり、自然食品・オーガニック製品の販売も積極的に増やしています。ここに来たら、無意識のうちに環境に配慮したものを選んでいたり、地域を応援していたりする。ヤマダストアーはそんなスーパーマーケットを目指しています。

―確かに、野菜以外の商品も他では見かけないものばかりですよね。地域のみなさんとはどのようにつながりを持たれているのですか?

地域の商店街のお店や農家さんとの新しい出会いは、“すでにヤマダストアーとお取引いただいている”地場の生産者様からの紹介が多いんですよ。日々のやりとりを通してヤマダストアーを信頼してくださったみなさまが、「まわりにこんな素敵な人がいるよ」と声をかけてくださり、その輪がどんどん広がっています。この話を聞くと、「同業者が増えると、同じ売り場内で競争が起こり、いい関係を築けないのでは?」と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。紹介してくださった方も、紹介を受けた方も、「質」に対する意識は誰よりも高い生産者。たとえば、納品時に「あの人の包装の仕方いいな。商品の見た目まで美しい」「自分ももっと工夫してみようかな」とお互いの商品を見て、学び、刺激をもらう。地場部門の担当として売り場の様子を見ていても、お客様へより良い商品を届けるために、お互いに高め合える雰囲気が生まれていると感じますね。ヤマダストアーでの販売を通して、地場の生産者様同士の新しい出会いがうまれ、コラボ商品が誕生することもあるんですよ!生産者様には切磋琢磨し合いながら、自慢の野菜を納得できるかたちで販売していただきたいので、販売価格に関しても自由に決めていただいています。また、誰よりも地域のことを知り尽くしているのは、それぞれの地域で展開しているヤマダストアーをご愛用くださっているお客様。おすすめのお店や生産者様をお客様自身が紹介してくださり、そこから新たな出会いが生まれる場面も多々あります。

―お客様と地場の生産者様、ヤマダストアーの3者の信頼関係を基盤に、新しいお取引先を広げられているんですね。

素敵な輪を広げてくださる地域のお客様や地場の生産者様には、いつも本当に感謝しています。みなさまのおかげで、私たちだけでは発見できなかった、商店街にある個人経営のお店にも出会えたんです。ですので、私たちはそういった「地元の人だけが知っている“いいもの”」をヤマダストアーの棚にも並べて、地域の循環にも貢献したいと思っています。シャッター通りも多くなり、オンライン販売に切り替える若い世代の方も増えてきた近年。そのなかでも、商店街で長年がんばっているお店や、昔から手づくりで上質なものをつくり続けている方はたくさんいます。そこで、私たちが「ローカルでも本当においしいものをつくっている方の商品」を販売できたら、生産者の所得が増加したり、商売として成り立つことがわかればお子さんが継いでくれたりするかもしれない。何よりヤマダストアーのお客様は、間違いなくおいしいものを並べたら喜んでくれますし、おいしかったから……と直接お店へ足を運んでくださるケースも多いんです。実際に商店街の方が「昨日ヤマダストアーのお客様が来てくれたよ! 」と声をかけてくれることもあるんですよ。ヤマダストアーは地域のみなさまに支えられて成り立っているスーパーマーケットなので、高品質だけれどなかなかお客様のもとに届かなかった商品を取り扱うことで、地域の循環にもつなげていきたいと考えています。

―なるほど。こだわりの商品を売り場に並べるとき、どんなことを大切にしていますか?

生産者様はつくるプロ、私たちは販売のプロとして、「商品をちゃんと“売る”」ことを何より大事にしています。生産者様が愛情を込めて、時間をかけてつくってくださっているのに、売れ残ってしまっては意味がありませんから。また、ヤマダストアーの各店舗には、青果部門とは別に「地場部門」を設けています。農家さんは朝早くから1人で黙々と作業していて孤独だったり、何かあってもどこに相談したらいいかわからず困っていたりする方も多い。だから、地場部門は売り場に並ぶ商品を管理するだけではなく、「実は今日こんなことがあってね」と農家さんが気軽に話せる相談窓口でもありたいと思っています。そして、生産者様との日々のコミュニケーションや産地訪問を通じて教えてもらった情報を、私たちは売り場を通じてお客様にわかりやすいかたちでお伝えする。こうして相互に支え合いながら「食」に向き合っています。

—先ほど私も店内を見学させていただきましたが、ポップやバーコードなど、いたるところにお客様への伝え方に対する工夫が感じられました!

たとえば同じ大根でも、赤土で育てる人もいれば、農地が海沿いにあり砂のようにサラサラとした土壌でつくっている人もいて。生産者様のいる地域や性格によって、みんなつくり方は違うんですよね。ですので、その“つくり手らしさ”をしっかり伝えられるポップづくりを意識しています。また、地場部門のバーコードについては、商品名ではなく「生産者様の名前」が印字されていることが特徴です。実際にバーコードを通じて生産者様の名前を覚えて、その方がつくる野菜のファンになる方も多いんですよ。お客様と生産者様がつながる1つのツールにもなっています。ヤマダストアーがお客様と地場の生産者様に支えられているからこそ、お客様と生産者様同士のつながりを広げていくことも私たちの役割です。

―最後に、これからのヤマダストアーの展望を聞かせてください。

ヤマダストアーは現在(2023年6月)8店舗展開していますが、それぞれに地場部門があり、店舗ごとに販売しているものが異なります。「今日は◯◯店に行ってみよう」と各店舗をめぐりながら、それぞれの地域の食を楽しんでくださる方が増えると嬉しいですね。そして、それが地域循環にもつながると考えています。食べ物がなくなる世界は、そう遠くはありません。持続可能な社会をつくるためには、それぞれに役割分担をして取り組む必要があります。大手のスーパーマーケット様にしかできないことがあるのと同じで、この企業規模のヤマダストアーにしかできないことがある。これからも持続可能性を考えながら、私たちのポジションだからできることに尽力していきたいと思います。

-これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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