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最終更新日:2023年12月20日

神戸の放置竹林問題を多くの人に伝えたい。王子動物園に輝く竹のクリスマスツリー。

竹とずーっといっしょプロジェクト

甲南大学×王子動物園×J:COM協働プロジェクト

 

クリスマスが近づくと、街中がイルミネーションで飾られてわくわくしてきますよね。2023年12月、神戸市立王子動物園にも大きなクリスマスツリーが登場しました。中央にあるライトが枝と枝の隙間からやわらかく輝き、壁に不思議な模様の影を映しています。幻想的な雰囲気のこのツリー、実は「竹の枝」を幾度も重ねて作られているのです。今回は、竹のクリスマスツリーができた経緯や込められた想いをご紹介します。

放置竹林問題を解決したい、と立ち上がった大学生たち。

今、竹を利用する機会と管理する担い手の減少で、放置された竹林が全国で増加しています。放置竹林では太陽の光が遮られ、他の植物が育ちにくく生物多様性に影響を与えています。また、野生鳥獣の住処となり、畑が荒らされるなど農作物への被害も深刻です。さらに、竹は根を横に広げるため土を支えきれず、土砂災害の危険性も高まります。2021年、この問題を解決したいと考えた甲南大学の学生を中心に「BambooにThank you Project」というプロジェクトが立ち上がりました。活動は主に、神戸市北区大沢町での竹林整備、伐採した竹を竹灯籠や竹炭などへ加工、活用の提案、情報発信です。竹資源の持続可能な利用を目指して、精力的に活動を続けてきました。最近では長年の取り組みが実り、竹炭が大学内のトイレの消臭剤や、商店街の花壇に土壌改良剤として利用されるなど、活用が拡がってきています。

王子動物園の閑散期を盛り上げるため注目したのは「タンタンの竹」。

神戸市立王子動物園では、閑散期である冬季が課題でした。王子動物園の番組を制作するJ:COM 神戸・芦屋の担当者は、冬を盛り上げる新しい企画ができないかと考えていました。そこで注目したのが、王子動物園で人気のジャイアントパンダ「タンタン」がいつも食べている「神戸市北区産の竹」です。地元の竹を使ったクリスマスツリーができれば、王子動物園らしいものになり、放置竹林問題の認知にもつながるのではと考えた担当者は、BambooにThank you Projectへ、ぜひ一緒に実現したいと連絡しました。そして2023年4月、甲南大学BambooにThank you ProjectとJ:COMによる「竹とずーっといっしょプロジェクト」が立ち上がります。ツリーの設計にはプロの視点が必要と考え、神戸市内の建築設計事務所株式会社MuFFもチームに加わり本格的に始動しました。

対話して、触れて、感じて見えてきた今までにないツリーの形。

2023年7月から3回のデザインワークショップが開かれました。企画の趣旨を確認し、皆でツリーのアイデアを出し合い対話を重ねます。9月に開かれた第2回ワークショップでは、学生それぞれが10個ずつ具体的なアイデアを提案。「ドーム型」「ハート型」「輪切り」「天井からつるす」「座れるようにする」など、多様なアイデアが出てきました。それらを組み合わせながら、新しいツリーの形を探っていきました。ワークショップの中でMuFFの右田さんは「竹の特徴を活かした新しい竹ツリーができないだろうか。」と学生たちに問いかけました。
転機が訪れたのは、9月末。「竹に触れながら考えよう」と、神戸市北区にある一棟貸しの古民家「一十土」が所有する山へ出かけたときのことです。竹を切り、薄くスライスしたものを曲げたり、編んだりして、その場で試行錯誤を重ねました。そこで目に留まったのが、「竹の枝」です。これまでのアイデアは竹の幹の活用がほとんどでしたが、あえて枝を主役にすることは新鮮で、意外性がありました。その後も話し合いを重ね、「竹の枝を使ったクリスマスツリー」というコンセプトが決定しました。

それから、MuFFの皆さんが中心となって設計を進め、イメージ図が完成。10月の第3回ワークショップでは、MuFFが所有する神戸市北区の山「IMAYAMA」でツリーの材料集めが行われました。なんと1日で切った竹は110本。竹を切るだけでも大変な作業ですが、そこから枝を落とす作業が続くので、かなりの体力仕事だったそうです。そして最後に、王子動物園の展示場所での設営作業。設計図はあるものの、枝の重ね具合はやってみなければ分からない部分が多く、現場で細かい調整をしながら組み立てていきました。

テーマは「光と影」。放置竹林問題にもなぞらえて

竹ツリーのテーマは2つあります。ひとつは、「竹のアップサイクル」です。普段あまり目に留まらない「枝」を使い、強度が強く、しなやかな特徴を生かした形状になりました。幹の部分は、展示期間中に実施するワークショップに用いて、資源を無駄にせず最大限活用しました。もうひとつのテーマは、「光と影」です。ツリーの輝きとともに、壁面に映し出される枝の不規則な影も楽しんでほしいと考えています。同時に、竹が持つ可能性や魅力といった「光」の側面と、放置竹林問題という「陰」の側面、両面を持つことを表現しています。

直接触れて考えてほしい。学生考案のワークショップ

竹ツリーの展示に合わせ、親子や若い世代が楽しめるワークショップを学生が考えました。12月17日に甲南大学の学生が担当した内容は、竹灯籠づくりとミニツリーづくりの2種類です。電動ドリルを使う竹灯籠は子どもには難しいので、小さい子どもでも楽しめるようにと簡単で斬新なミニツリーを新たに考案しました。メンバーの久保さんは、「参加者のみなさんはワークショップに真剣に取り組んでくれました。『楽しかった』と言ってもらえてよかったです。直接伝える大切さを実感しました。」と振り返りました。
※12月23日には、神戸海星女子学院高校の「竹やクリスマスリースのストラップづくり」も行われますのでぜひご参加ください。

放置竹林問題をまずは知ってほしい

竹ツリーに関わった方々に、企画を通して感じたことを伺いました。

BambooにThank you Project 久保千尋さん
放置竹林問題は多くの人にとってまだまだ身近な存在ではないと思います。イベントやワークショップで、放置竹林問題を知ってもらい、次のアクションを促すことができたらと思います。

株式会社MuFF 右田知哉さん
この企画で放置竹林問題を初めて知りました。竹の伐採と枝をはらう作業が本当に大変だったのですが、大変だからこそ放置されてしまうのだと実感しました。

株式会社ジェイコムウエスト 垣内明里さん
大学生との連携は、局として初めての試みでした。学生たちと一歩ずつ考えを深めながら進めていけたと思います。放置竹林問題はこの企画を通して初めて知りました。実際に竹林を見て、改めて竹林の多さに驚き、管理の大変さを身をもって学びました。

BambooにThank you Project/一般社団法人一十土 吉田彰さん
ひとりの力だけではできないことが、それぞれの強みを活かしてチームで取り組み実現できました。竹ツリーによって、いきなり放置竹林問題が解消する訳ではありませんが、まずは知ってもらうことに大きな意味があると思います。

 

竹のクリスマスツリーは2023年12月26日(火)まで、神戸市立王子動物園内の動物科学資料館に展示されています。ツリーのやさしく力強い姿を見ていると、どんなに深刻な環境問題も、さまざまな立場の人たちが力を合わせて考えていけば、解決に向かうのではないかと勇気が湧いてきます。皆さんも、このツリーを通して、自分ができることを少し考えてみませんか。

 

竹のクリスマスツリー展示情報

「竹とずーっといっしょプロジェクト」―甲南大学×王子動物園×J:COM協働プロジェクトー

展示場所:動物科学資料館(神戸市立王子動物園内)
展示期間:2023年12月14日(木)~12月26日(火)
展示時間:午前9時~午後4時30分(神戸市立王子動物園閉園まで)

J:COMホームページ「竹とずーっといっしょプロジェクト」

Web site
https://c.myjcom.jp/user/event-kansai/kobe-ashiya-take.html

BambooにThank you Project

Web site
https://78projectkounan.wixsite.com/my-site-2/
Instagram
https://www.instagram.com/bamboo_thankyou/

GOGREENKOBE BambooにThank you Project紹介ページ

https://gogreenkobe.jp/people/bamboonithankyou/

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