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最終更新日:2025年10月9日
地球にやさしく、自分にもやさしい暮らしのヒントを、GO GREEN KOBE編集部がお届けする新連載が始まりました。
記憶に新しい夏の猛暑や、全国各地の集中豪雨…。なんだか地球の調子が悪くなっているようで、このままで大丈夫なのかな?と、ちらっと思う日々。
何かしなきゃとは思うけれど、何から始めたら良いか分からないので、神戸でいろいろと取材してみることにしました。
まずは一番気になっている、生ごみが消える!と話題の「キエーロ」。
お話を聞いてみると、ごみを減らせるだけじゃなく、有機栽培で育つ野菜がつくれるそうですよ。早速、レポートします!
まずお話を聞いたのは、神戸市環境局の横山専門役。市内の小学校などへキエーロの出前授業をされているということで、プチ授業をしていただきました。
キエーロは、土の中の微生物の力で生ごみを分解する、コンポストの一種です。神奈川県の松本信夫さん・恵里子さんご夫妻が考案され、「(生ごみ)消えろ」から「キエーロ」と名付けられたそうです。
神戸市では、燃えるごみの約3分の1を占める「台所ごみ(生ごみ)」を減らすために、キエーロに着目し、生ごみ減量プロジェクト「こうべキエーロ」を展開しています。
ほかのコンポストと違う、キエーロの特長は4つあります。
- 生ごみが消えても土の量は増えない
- 土が元気になり、有機栽培で野菜がつくれる
- 土と容器とフタがあれば、ベランダでも簡単に始められる
- 嫌なニオイや虫で悩まなくてOK
生ごみって、もともとは食べ物、つまり命があるものですよね。食べられない野菜の皮やヘタの部分をキエーロの土に埋めると、土が栄養たっぷりになり、元気な野菜ができます。そして、それを食べた後の野菜くずをまた土に埋めて、また野菜を作って・・・と命が循環するんです。キエーロって、すごいでしょ?
知れば知るほど面白い、キエーロのこと。今日は入門編として、基本的な部分を一つずつ解説していきましょう。
1.生ごみが消えても土の量は増えない
1円玉(=1g)の重さの土には、数億個の微生物がいます。土の中に埋めた生ごみは、微生物が分解することで、大部分が二酸化炭素や水蒸気になって空気中に放出されます。だから、土が増えないんです。
微生物が元気に動ける環境(温度・酸素・適度な水分)さえあれば、キエーロを続けられます。
2.土が元気になり、有機栽培で野菜がつくれる
市販の園芸用の土は、植物が育つための化学肥料があらかじめ混ぜてあります。それらは使うと無くなるので、同じ土で育てていると肥料が足りなくなってしまい、追肥や土の買い替えが必要になります。
ところが、キエーロは違います。生ごみ(有機物)を微生物が分解することで、肥料たっぷりの元気な土になるんです。しかも、化学肥料ではないので、有機栽培ができる土です。今から生ごみを入れて土作りを始めると、来年の春には、野菜が育てられる土になりますよ。土のリサイクルができるので、新しい土を買う必要がなくなります。
写真は、私が実際に自宅でキエーロの土で育てて、収穫した野菜です。窓の外のゴーヤカーテンもキエーロの土。右の写真は、ロマネスコという珍しい野菜です。トマトやカボチャなどは、生ごみとして混ぜた種から芽が出て、自然に育つこともあります。自然の力って、すごいですよね。
3.土と容器とフタがあれば、ベランダでも簡単に始められる
キエーロを始めるには、決まった道具や、特別な道具は必要ありません。
図のように、4つのアイテムを準備するだけ。
①耐久性のある深型容器・・・・・深さ20cmの土が入る深型プランターや収納ケース
②黒土、有機培養土などの土・・・14ℓ以上。使い終わった園芸用土でもOK
③雨よけのフタ・・・・・・・・・太陽の光を通す、透明の波板やシート類
④その他、スコップや生ごみ保管用のフタ付き容器・・・あれば便利です
材料は、ホームセンターなどで、手軽に揃えられますよ。神戸市では「こうべキエーロサポート店」制度を設けているので、行ってみてください。
キエーロの容器ができたら、日当たりが良く、風通しの良い屋外に設置して準備OKです。
4.嫌なニオイや虫で悩まなくてOK
キエーロが準備できたら、早速、穴を掘って、生ごみを投入します。まずは200gくらいからスタートするのがおすすめ。細かく刻むと良いですよ。
空気を入れるように、土とよく混ぜ合わせて、乾いていれば水分を足します。
土の中にはたくさんの微生物がいるので、よくかき混ぜるのが失敗しないコツです。
最後に、生ごみが見えないように、乾いた土をかければ、夏は5日程度、冬は2週間ほどで、生ごみが分解されます。
この時、しっかりと乾いた土を表面にかけることが重要です。生ごみが土の表面に出てしまうと、虫が寄ってきたり、ニオイの原因になったりします。そこさえ気をつければ、土の中で分解されるため、虫やニオイはほとんど発生しません。
コーヒーかすや、お茶殻を入れると、ニオイ消しの効果があるので、混ぜてみるのもおすすめですよ。
お話を聞いて、環境にも、体にもいいキエーロを、私も始めたくなりました!
早速、こうべキエーロサポート店の第1号店「アグロガーデン神戸駒ケ林店」へ伺って、あれこれ教えてもらいながら、材料を買いに行ってきます。
キエーロのことならおまかせ! アグロガーデン神戸駒ケ林店
市営地下鉄 駒ケ林駅の2番出口を出ると、すぐ目の前に「アグロガーデン神戸駒ヶ林店」があります。店舗入口を入ってすぐのところに、キエーロの特設コーナーが!
あ!下の段に並んでいる木箱が、キエーロですね。ナチュラルでかわいいです。
これなら私の家のベランダにも置けそうです。
近くで見てみると、ちゃんと透明の波板のフタも付いていて、開閉できるようになっています。木の板もしっかりしていて丈夫そう。木目もおしゃれで、ベランダで育てている植物と並べても違和感ありません。
どんな人が買いに来ているんだろう? 上手にキエーロを使うコツとかあるのかな?
いろいろ聞いてみたくなり、キエーロに詳しい3名の方にお話を伺いました。
左から、アグロガーデン神戸駒ヶ林店 橋本さん、同店渉外担当マネージャー 森井さん、同店副店長 澤江さんです。
ー店頭の木製のキエーロがすごく素敵でした。どなたかが作られたんですか?
橋本さん「あれは、今年の夏休みの木工イベントで、キエーロを作ったときに用意した材料で作ったものなんです。試行錯誤しながら、図面を起こしました。木工に慣れていない親子さんでもきちんと完成させられるように、試作を何度もして。特に工夫したのは、フタを開け閉めする部分ですね。せっかくキエーロに興味を持って、作ろうとチャレンジしてくれた方には、気持ち良く、いいものを持って帰ってもらいたいですから」
ーどんな方がキエーロを買いに来られますか?
澤江さん「若い方も意外に興味をお持ちです。30代のご夫婦が『お子さんと一緒にキエーロを始めようと思って』と探しに来られます。また、神戸市環境局のイベントで、ペットボトルでキエーロを作ったことをきっかけに、本格的にやってみようという方もいらっしゃいます。どんな小さな質問でも、スタッフにお声がけいただければ、私か橋本さんがアドバイスさせていただきますよ」
橋本さん「透明の波板や木材など、自作するための材料はすべて店内で揃います。長さに合わせてカットしたり、穴を開けたりする加工もおまかせください(有料です)」
ーどんなことに気をつけて、キエーロを始めたら良いでしょうか?
橋本さん「設置する場所は雨がかからないようにすることが大切です。そういう意味では、ベランダは適した環境かと思いますよ。また、生ごみを埋める穴が浅すぎると、虫が寄ってきやすくなるので、土にごはんをあげるイメージで、しっかり穴を掘って混ぜてあげると良いですよ」
澤江さん「キエーロの土で、野菜を作るのがおすすめです。今から始めれば、春植えの野菜に十分間に合います。ほかの土より元気なので、野菜が大きく育ったり、味が良くなるような気がします。楽しいですよ。家で育てたトマトはとても甘かったです」
ーキエーロにどんな可能性を感じますか?
森井さん「私たちのお店は、地域に支えられています。SDGs活動にも積極的な会社なので、地域の方のお役に立ちたいと考えていて、ふたば学舎でのイベントにご協力したこともあります。
キエーロの件では、ある団地からご相談がありました。5階建てでエレベーターのない団地で、上層階の高齢者がごみ捨てに苦労されているので、キエーロを全戸に設置して、生ごみを減らせないかというご相談でした。もし実現すれば、重いごみ袋を持って階段を降りなくて良いし、ごみ出しの頻度も下がります。
キエーロはごみ減量だけでなく、こういった地域課題を解決する可能性も秘めていると感じています」
ー最後に、皆さんへメッセージをお願いします
澤江さん「キエーロを始めてみたいけれど、どうしたらよいかと迷っている方は、ぜひ私たちにご相談ください。どんな小さなことでも大丈夫です」
橋本さん「環境のため!とあまり気負いすぎず、ごみが減って、自分の生活が少し楽になって、ついでに地球も汚さずに済むぐらいの気持ちで、まずは始めてみてください。キエーロを使う人が一人でも増えれば、だんだん大きな力になっていきます」
森井さん「私は地域の団体や企業を担当していますので、何かお困りごとやお悩みがあれば、キエーロを使って解決できないか、一緒に考えてまいります。お電話くだされば、直接現地へもお伺いいたします」
インタビューを終えて、店舗2階の素敵なカフェで一休み。センスの良いインテリアと、大きな窓から光が差し込み、グリーンがいっぱいで癒やされます。ホームセンターの2階に、こんなカフェがあるなんて!
コーヒーを飲みつつ、アグロガーデン神戸駒ヶ林店の小さいサイズのキエーロを買うのもいいし、DIYにチャレンジして一から作ってみるのも楽しそう。春にはミニトマトやバジルの苗を植えて、有機栽培のおいしい野菜も育ててみたいし、収穫できてお料理は何にしようかな・・・なんて、ワクワクが止まりませんでした。
もっと知りたい人へ
キエーロQ&A
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