~こうべキエーロ 訪問レポート~
現在のお気に入りは「フードプロセッサーと竹チップ」。
キエーロ考案者 松本信夫さん・恵里子さん夫妻 (こうべキエーロ アドバイザー)
ごみ問題に関心があり、さまざまなコンポストを試していた松本信夫さん・恵里子さん夫妻が、たまたま庭の腐葉土の中に埋めた生ごみが消えていたことからヒントを得て考案したキエーロ。では実際に、考案者である松本夫妻は現在どんなキエーロを使っているんでしょうか。神奈川県・葉山町のご自宅にお伺いして、お話を聞いてきました。
「うちは駅からのアクセスが悪くて不便だから。」と、神戸から訪れた私たちをわざわざ最寄り駅まで迎えに来てくれた信夫さん。ご自宅では恵理子さんが「遠いところご苦労様です。」と労いの言葉で迎えてくれました。
葉山町にある松本さん宅は眼下に深い緑の山々が広がる高台にあり、案内されて裏庭に出ると、立派なケヤキの木が目を惹き、よく手入れされた庭のあちらこちらに大小さまざまなキエーロが置かれています。
「このケヤキの落ち葉がとても多くて、土と混ぜて腐葉土を作っていたんです。」とキエーロ誕生のきっかけを教えてくれた信夫さん。この木がキエーロの起源なのかと、私たちの気持ちも高まります。
大量の生ごみを分解してくれる大型の直置きキエーロ。
信夫さんが主に使っているのは花壇の上に置かれた木製のキエーロ。底板がない幅120㎝奥行60㎝の大型サイズで、通気口には金網を取り付け、虫や野生動物の侵入を防いでいます。花壇の土と直結しているため、大量の微生物が生ごみをどんどん分解してくれます。汁物など水分が多い生ごみでも土が余分な水分を吸収してくれるため安心して埋めることができるそう。
「このキエーロは、年間約200㎏の生ごみを埋め続けて約7~8年経ちますが、全く土は増えてないですね。」と信夫さん。埋める量は多い時で1回約2㎏にもなるそうで、生ごみはステンレス製のフタ付きポットに溜めておき、埋める場所をローテーションしながら、大きなショベルでザクザクと穴を掘って埋めています。
「ごろごろした土の塊がたくさんあるでしょ?これは分解途中で水分が足りなくなった生ごみなんです。」と、拾い上げた土の塊を割ってみると中から白カビが。「白カビは分解が順調なサインだけど、土の温度を上げてしまうので、水分が足りなくなるんです。」と、水分不足で分解が止まってしまう理由を説明してくれました。
「こんな時はザクザク砕いて水分を足してやるとまた分解が始まります。なかなか分解が進まない時って、水分が足りてないことが多いんですよ。」 と、ショベルで土の塊を砕き、たっぷりと水分を加えます。
「直置きのキエーロは大きくて生ごみを大量に分解できるんだけど、しゃがんで作業をしなくちゃいけないから、足腰の弱い方にはあまり向いてないかもね。」と直置き型のデメリットもさりげなく教えてくれました。
フードプロセッサーは調理・キエーロ兼用。ペースト状にすれば分解速度がアップ。
「私は野菜くずをペーストにしてから処理してるの。その方が分解がすごく速いんです。」 恵里子さんがキッチンから持ち出してきたのは野菜くずがいっぱいに詰まったフードプロセッサー。スイッチを押すとあっという間に野菜のペーストができあがります。日頃の調理にもこのフードプロセッサーを使っているという恵里子さん。「お料理の時に出る野菜くずはこの中に溜めているんです。調理用と生ごみポットを兼用するのに抵抗ありませんか?ってよく聞かれるけど、さっきまで同じ野菜の一部だったものでしょ。腐ってるわけでもないしね。」 と笑います。
乳酸菌豊富で虫が寄りつかない竹チップキエーロに期待大。
キエーロに恵里子さんが普段使っているのはキッチンのすぐ外に置かれた背の高い木製キエーロ。フードプロセッサーの容器から直接野菜ペーストを流し込んでいます。あれ?穴は掘らないの?と思っていたら、「これは竹チップのキエーロでね、穴を掘って埋めると言うより混ぜ合わせる感じでいいんです。」と、熊手を使ってペーストと竹チップをかき混ぜていきます。
「竹チップは黒土に比べて乳酸菌が豊富でね。粗めに砕いた竹チップは通気性も抜群でよく分解するんです。」
竹チップは土ほど水分を吸収しないため、箱の底に黒土の層を作り余分な水分を吸収できるように工夫されています。底に水が溜まると腐敗の原因に。
「他にも竹チップの利点はいろいろあるの。土を運ぶのは大変でしょ?竹は軽いから女性でも扱いやすいの。可燃ごみとしても処理できちゃうし。」
「全国的に放置竹林の問題があるでしょ?その竹を砕いてキエーロに使えたら、いい循環のストーリーができるじゃないですか。」
土の代用に竹を細かく砕いたチップを使うことは、分解力や使いやすさの面でもぜひ試してほしいと夫妻は言います。ただ、竹チップの生産量が少ないため簡単に入手できないことが課題だとも。神戸市でも放置竹林から伐採した竹の利用方法や循環が課題になっています。私たちも竹チップのキエーロをぜひ試してみようと思います。
楽しみながら続けること。疲れたら休むことも大切です。
今回、キエーロを考案し、試行錯誤を重ねながら行き着いた松本家のキエーロを見る機会をいただいたこと、そして何より、夫妻のやさしい人柄に触れられたことが大きな収穫になりました。帰り道の車中で「キエーロに取り組む人に悪い人はいないんです。みんないい人ばかり。だって生ごみ減らす活動なんて心のきれいな人しかやらないでしょ。」と笑う信夫さんの言葉がとても印象的でした。
松本信夫さんからのメッセージ
「神戸のみなさん、キエーロを使ってもらえて本当にうれしいです。コンパクトなサイズで試してみて、便利だなと思ったらぜひサイズアップしてみてください。家庭から生ごみがなくなっちゃいますから。」
松本恵里子さんからのメッセージ
「神戸のみなさん、ぜひ楽しみながら続けてください。神経質にならない方がいいですよ。義務じゃないから疲れたら休んでいいんです。いつでも再開できますから。」