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アップサイクル海のプラスチックごみ問題

最終更新日:2024年3月4日

インタビュー・文 /北村胡桃 写真/江副真文・田岡和也さん提供

チラシやごみで作るアート。捨ててしまうようなものに価値が生まれて、子どもたちが熱中している姿を見るのが嬉しいんです。

アーティスト 田岡和也さん

1983年、香川県琴平町生まれ。大阪芸術大学在学中の2003年に初個展。まちをぶらぶらしては、景色を眼と写真に写し、それら記憶のかけらをコラージュし一枚の絵へと変換する作品の制作を開始。現在は神戸市で暮らし、六甲ミーツアートや下町芸術祭、こどもフェスタなどのイベントに多数出展。駅や図書館、銭湯などでの個展を開催するなど、美術館やギャラリーから路上まで、展覧会、ワークショップ、壁画、ライブペイントと、活躍の場を広げている。

website
https://taokakazuya.jimdofree.com/

YouTube
OH!マイ瀬戸内(岡山放送)『Re:SETO』海洋ごみで作るアート作品
https://youtu.be/U5YIyPWVGvM

Instagram
https://www.instagram.com/yamani_iku_taoka/

―田岡さんのアート活動は「環境にやさしい」とのことですが、どのようなアートなのでしょうか?

僕の作品はよく、拾ったものやもらったもの、ダンボール、チラシ、新聞紙、梱包材などで作ります。例えば、2020年から参加している、現代アートの芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩」。六甲ミーツアートの過去のチラシで凧を作るワークショップを企画しました。チラシを折って紐をつけるだけで、昔ながらの「ネズミ凧」ができます。参加した子どもたちは、集中して長時間遊んでくれました。凧を飛ばしているのを見て「面白そう!」と寄ってくる子や、「幼稚園でみんなに教えてあげるんだ!」って言う子もいて。すごくいい反応でしたね。今の子どもたちって、捨ててしまうようなものでおもちゃが作れることを知らないから、新鮮なんだと思います。

―環境やSDGsに関する作品やワークショップは他にどんなものがありますか?

2019年には岡山放送のSDGsをテーマにしたテレビ番組の企画で、海洋ごみでオブジェを作ったことがあります。清掃芸人で有名なマシンガンズの滝沢さんのサポート役という立場で参加して。滝沢さんが海に潜って拾ってきたごみや、漁で網に引っかかったごみを使って、スナメリを作りました。他には、2024年2月に兵庫区の「バイソン」という拠点で、日の出を見るイベントを企画しました。朝6時集合で、6時半から日の出を見るっていうただそれだけのイベントです。曇ったり雨が降ったりすれば日の出は見られないという自然に大きく左右される体験や、ちょっと朝早く動くだけでいいことがあるという発見。そういう、当たり前にあるものを改めて捉えてみるような企画はよくやりますね。

―身近なものを使ったアートは、環境やSDGsを意識されてのことですか?

僕、小遣い制なんですよ。小遣いが限られていることもあって、何かアクションを起こそうと思ったとき、それほど予算をかけられない。それなら、あるものをかき集めて何とかしようと考えていたら、今の作品やワークショップの形が生まれていきました。だから今まで全く環境やSDGsを意識していなかったんですよね。時代が追い付いてきた感じです。
兵庫区の和田神社で、友人とごみ釣りワークショップを企画したことがあって。近くの枯れた運河で拾ってきたごみを並べて、子どもたちに釣ってもらったんです。「地域最安値1円!」と呼びかけたら、小学生が「めっちゃおもろいやん。僕10回やっちゃおうかな!」って言う子が遊び始めて。それを見た子どもがどんどん寄ってきて、結構盛り上がりました。革ジャンが釣れた子に「持って帰る?」と聞いたら、「いらない。汚いから。」と即答されたので、ごみ袋に入れて分別してもらいました。その姿をたまたま見ていた議員の人に「SDGsですね。」って言われたんです。意識していなかったので、意外な言葉にびっくりしましたよ。

―田岡さんのワークショップは、参加者が伸び伸びとして自由な印象を受けます。アート活動で面白いと思う瞬間はどんなときですか?

ただの紙切れや余ったチラシなど価値がなくなったものに手を加えて、子どもが熱中してくれるのは結構快感ですね。チラシで作るメンコのワークショップをすると、子どもたちは勝手にルールを作って、朝から日が暮れるまでずっと遊びます。段ボールを「バトルフィールド」と設定して試合開始。紙を一枚渡せば、トーナメント表を書き出します。「材料使い放題」と言えば、ガムテープを大量にメンコに巻きだして団子みたいにする子が現れて。最終的にはその団子みたいなメンコを投げ合う遊びに変わってしまう…。遊びが子どもたちの手で立ち上がって、変化していくのを見るのは面白いですね。そのうち仕切る子が登場したり、知らなかった子同士が仲良くなったり喧嘩したり。小さな社会が生まれていくのも見ていて楽しいですね。あと、ごみに価値が生まれたときはすごく嬉しいです。2023年12月の新神戸でのマーケットイベントで、家にあったバームクーヘンの空箱の周りにファミコン風の絵をペイントして「ハミコン」と名付けて2500円で販売したんですよ。そしたら「欲しい!」っていう方が現れて、なんと、売れたんです。すごく驚きました。

他にも、段ボールで作ったたまごっちを「たまごやたおかっち」と名付けて、一番くじを販売したことがあって。くじで「たおかっち」が当たった子がすごく残念そうな顔をして「これ、どうやって遊ぶの?」って尋ねてきましたね。中には「たおかっちが欲しい!」と言う人もいました。

—田岡さんのアート作品はどれも今あるものを最大限に面白く捉えていますよね。作品の原点はどこにあるのでしょうか?

僕が子どもの頃、「つるピカハゲ丸」っていう漫画があって。主人公の家は貧乏なのですが、貧乏な中に楽しさがあることを教えてくれる漫画で、僕のお気に入りでした。例えば、お祭りで主人公がお母さんに「お面ほしい!」とせがむシーン。お母さんは、道で拾った焼きそばの皿でお面を作って「これでもつけとけ!」って主人公に渡すんです。いかにあるもので楽しむかっていう発想はこの漫画がベースにありますね。あとは、子どもの頃の遊びも影響しているかもしれません。山の中に秘密基地を作って生活したり、友人4人で「町内の自動販売機の下を探したらすごいお金になるんちゃうか!」って自転車で町内中走り回って1000円ぐらい集めてお菓子パーティーをしたり。どんなことも遊びにしてしまう、お金がなくても楽しいみたいな感性が育ちました。

―普段はプラスチック製造関係のお仕事をされているとお聞きしました。普段のお仕事とアーティストの活動がリンクすることはありますか。

普段は産業機械のメーカーで働いていて、プラスチックやゴムの成形に使う機械のメンテナンスを担当しています。僕は芸術大学を卒業したのですが、縁があって今の会社に入社しました。入社当初は未知の分野で覚えることが多く、かなり大変でした。あるとき、「この仕事って、ものづくりを支える仕事やな」って気づいて、仕事が面白くなりましたね。プラスチックって元々透明で、ドライカラーという粉やマスターバッチという着色剤を混ぜて色付けして成形するんです。お客さんに色の混ぜ方や色むらが出ない方法を伝えるとき、大学で勉強してきたことがつながっていると感じますね。

―海洋プラスチック問題など、プラスチックは環境に影響を与えている面もありますね。製造に携わる立場として感じることはありますか。

道に落ちているプラスチックを見ると、やっぱり残念に思います。自分は捨てないでおこうと思いますし、みんながそう思ったらいいのに、と考えることはありますね。でも、プラスチックって衣食住にすごく直結していますよね。今履いている靴も、スマホも、住宅も、車も。登山道でも、看板などはプラスチック製。生活になくてはならない存在です。だから問題は「扱い方」だと思います。使う人が最後ちゃんとごみ箱に捨てる。ただそれだけのことじゃないかと。

―アーティスト活動だけでなく、私生活でも環境にやさしい行動を取り入れていますか?

僕は「GOGREENKOBE」を体現していると思います。例えば登山。九州に単身赴任していたとき、休みの日に山へ行くようになって。シートを敷いて、読書したりしてほぼ外で過ごしていたんです。そしたら、電気代がすごく安くなったんですよ。明るいとき外にいたら電気代がかからない。まさにこれこそエコですよね。最近は、神戸の山、出張先の山に時間があるときは登っています。あと、移動は大体自転車です。1990年代の自転車をきれいに修理して使っています。故郷の香川に帰省するときはたまに自転車で帰りますよ。服は基本古着ですね。ネットに入れたり裏返したり、洗剤の入れ方や干し方のコツを妻から細かく教わって、大事に着るようにしています。息子が中学を卒業してこの春から高専生になるのですが、家族で遊びに行くといったら、いわゆるテーマパークではなく極力田舎へ。山に登ったり、渓流で沢ガニ捕まえたり、川や海に魚釣りに行ったり、家庭菜園で野菜育てたり。自然のなかで身体を使う事を意識して遊んでいました。

―神戸や出張先の山に登っているとのことですが、田岡さん流の山登りの楽しみ方を教えてください。

山に1回登るごとに、「山とTAOKA」という本を1冊作るんです。九州での単身赴任中に山にハマってからずっと続けていて、今回の取材で111冊目になります。日付と天気、登山中に拾ったプルタブや飴の包み紙なんかを貼り付けたり、スマホで撮った写真を下山後すぐにコンビニで印刷して貼り付けてみたり。その日のうちに完成させます。僕以外の人が見ても意味が分からないようなものですが、僕が見たらその日の山行が全部思い出せる。これは自分でも「発明や」と思っています。
他にも山にはいろんな楽しみ方がありますね。体力づくりになるし、スケッチしたり、ごはんを作ったり。いろんな人とも出会えるのも面白いです。あるとき、ITベンチャーの方と登山中に知り合って、イベントに呼んでもらったこともあります。またあるとき、山小屋で鍋を作っていたら、近くにいた女性から「一緒に下山せえへんか」と誘われて。僕は来るもの拒まずなんで、一緒に下山して銭湯まで行きましたよ。山の遊び方って、決まりがなくて自由度が高いですよね。外で過ごすというすごく基本的なところにこそ未来があるんじゃないかって思うんですよね。

―神戸の自然をとても楽しまれていますね。田岡さんにとって、神戸の魅力は何ですか。

山と海、自然と街の距離が近すぎるところですね。山を登っていると、たまに看板やガードレールに、街中の壁でよく見かける「グラフィティ」を発見することがあるんです。ストリート系の人も登るほど、神戸は山が身近なんだと驚きます。髙取山などで盛んな「毎日登山」の文化も、山と街が近い神戸ならではだと思います。

―これから挑戦してみたいことはありますか。

何かやるときに、かけるお金を1円でも少なく、省エネな方向を極めていきたいです。お金かければ、すごいものは当たり前にできてしまうから、あえてお金を抑えた小さいもので、大きな面白いことができればいいなと思います。

―GO GREEN KOBEを体現されている田岡さんおすすめの環境アクションを教えてください。

安くてもちゃんとした運動靴を一足買って歩いてみるのはいかがでしょう?普段ブーツやヒールの高い靴を履いてる人ならまず普通のスニーカーでいいので、自分の足に合う靴を買ってみてください。靴が変われば歩くのが楽しくなると思うんです。最近は新幹線とか飛行機とか、早く遠くに移動するのがいいような風潮ですが、非効率でもゆっくり自転車や徒歩で移動すると見えないものが見えてくることがありますよ。靴がきっかけになって近所の山を登ってみようかとか、アクションが広がっていくんじゃないかな。

-これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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